400mと1500mの2種目で世界新記録を樹立した佐藤友祈
6月30日・7月1日、WPA公認第23回関東パラ陸上選手権大会は町田市立陸上競技場(東京都町田市)で行われた。男子T52(車いす)の佐藤友祈(WORLD)が1500mで3分25秒08、400mで55秒13と2種目で世界新記録を樹立した。女子T63(大腿切断)の前川楓(チームKAITEKI)は走幅跳で4m05、100mで16秒74と2種目で自身のアジア記録を更新した。
「見えない相手と戦うのはすごく難しかった」
本大会、男子T52の1500mにエントリーしたのは佐藤のみ。狙うのはただひとつ、世界記録だった。まさに佐藤が言う“見えない相手"との戦い。佐藤は、2018年5月25日〜27日に行われたWorld Para Athletics Grand Prix(スイス)で、世界記録を狙っていたが惜しくも届かなかった。リベンジとなった本大会。10時の時点で30度を超える猛暑日で風も強く吹いていた。選手にとって天候のコンディションは良くなかった。「ここで狙えなかったら今年の世界記録更新はないだろうという意識のもと、今回挑戦した」と佐藤。結果は3分25秒08とMartin,Raymond(アメリカ)の持つ3分29秒79の世界記録を、4秒以上上回った。ゴール直後、拳を上に高く突き上げ、吠え、そして満面の笑みをこぼした。
その約1時間後、佐藤は再び拳を突き上げることになった。400mでも55秒13の世界新記録を叩き出した。「僕だけの力ではない。応援の人たちがパワーをくれた」と話し、2つの世界記録について「1つも持っていなかったのですごく嬉しい」と素直な思いを語った。佐藤は本大会で、スピードメーターを外してレースに臨んだ。「スイスでは、メーターを意識しすぎてしまった。メーターを外すことで自分のリミッターも外れた」と話し、自分でコーチに提案したというこの試みは、快挙へと繋がる大きな要因となった。「国内トップ、海外トップをキープし続ける。誰にもゆずる気は無い」と今後に向けて強気の姿勢を見せた。
走幅跳と100mで自身のアジア記録を更新した前川楓
「3回は何がだめなのか分からなかった。いつものを思い出して跳んだ」と前川が話すように、走幅跳で1回目から3回連続でファールをするが、4回目で調子を戻すと、5回目で4m05と自身の持つアジア記録を6cm更新した。100mでも自身の持つアジア記録を上回る、16秒74のタイムを叩き出し、「基本的な動作を1から見直してきた。冬にやってきたことが発揮できてよかった」とレースを振り返った。
(文・峯瑞恵、写真・竹内圭、峯瑞恵)