10チームが出場している男子車いすバスケットボールは、10日、予選プール第3戦が行われ、日本は前回覇者の韓国と対戦した。前半こそ韓国に主導権を握られたものの、後半に入って徐々に点差を詰め、4Qで逆転。集中力が失われ、緩慢なプレーが多くなっていった韓国とは裏腹に自分たちのプレーをすることに集中し続けた日本。最後は韓国を引き離し、81-67で勝利を挙げた。
「Reo Fujimoto」の名前が何度も会場内をこだまし、そのたびに詰めかけた観客の歓声が鳴り響く――。日本の大黒柱である藤本怜央が、ついに目を覚まし、チームを勝利へと導いた。
「この一戦のために準備をしてきました」
4年前の雪辱を果たす時がついに訪れたことを、藤本は誰よりも感じていたのかもしれない。
2014年、韓国・仁川で行われたアジパラで、日本は決勝で韓国に敗れ、王座を奪われた。その時、エースとしてキャプテンとしてチームを牽引したのが藤本だった。その時の悔しさを、藤本が忘れるはずはなかった。
しかし前半は、韓国が主導権を握った。エースのGim Dong Hyeonが力技で日本の守備をかいくぐりインサイドを攻めてタフショットを決めれば、ベテランのOh Dong Sukは得意の3Pで日本を引き離した。一方、日本は守備でリズムを作ることができず、それが影響したのか、攻撃でもシュートの確率がなかなか上がっはてこなかった。
一時は最大19点差をつけられた日本だったが、2Qの後半には鳥海連志、赤石竜我の10代2人の活躍もあり、9点差となんとか1ケタ台で試合を折り返した。
そして後半、少しずつ動きが鈍くなってきた韓国に対し、ハーフコートディフェンスからプレスディフェンスに切り替えた日本の守備が機能した。すると、攻撃でも日本に流れが傾き始める。古澤拓也が立て続けに3P を決めれば、村上直広にも連続得点が生まれた。
そして、極めつけは藤本だった。厳しいマークにあいながらも、難しいフェイドアウェイシュートのブザービーターを決めてみせた。その瞬間、藤本はある予感がしたという。
「自分らしいプレーが、ようやくここから始まるのかもしれない」
そして、それはズバリ的中した。4Qはまさに彼の“独壇場"と言っても過言ではなかった。特にミドルシュートがさえわたり、次々と沈めていく藤本。最後は3本連続でシュートを決め、韓国を突き放した。
この藤本の活躍を陰で支えたのが、香西宏昭だ。
「宏昭が、コンスタントにシュートを打ちやすいパスを供給してくれたおかげで、自分はストレスなく得点を取るという自分の仕事にフォーカスできた。それがあの4Qの追い上げにつながったと思います」
試合後、藤本は香西から「おかえり」という言葉をもらったという。
「なんだか恥ずかしくて、特に返事はしなかったですけど(笑)、でも内心では嬉しかったですよ。やっと期待に応えられたんだなと。間違いなく僕にとって、大きな自信になった試合になりました」
しかし、これで“4年前の雪辱"がコンプリートされたわけではない。王座奪還が最終目標だ。
11日には予選プール最終戦を迎え、それを終えるといよいよメダルがかかった決勝トーナメントがスタートする。王座奪還に向け、チームは今、加速している。
(文・斎藤寿子、撮影・岡川武和)