11月29日、2019アジアオセアニアチャンピオンシップスがタイ(パタヤ)で開幕。大会2日目の30日、日本は男女ともに予選リーグ初戦を迎えた。地元タイと対戦した男子日本代表は、前半から攻守にわたって圧倒し、64-37で快勝。優勝に向けて白星発進した。一方、女子日本代表はオーストラリアと対戦。第1Qでは10-2とリードを奪ったが、第2Qに逆転を許すと、そのまま流れを引き戻すことができず、33-50で黒星を喫した。
大事な初戦のスターティングメンバーに抜擢されたのは、鳥海連志、古澤拓也、川原凜、赤石竜我の若手4人に、チーム最年長の藤本怜央のラインナップ。「今、最も強いラインナップの一つ」と及川晋平HCが自信をもって送り出した5人だ。
そのなかで、難しい初戦の立ち上がりで先頭に立ってけん引したのが、藤本だった。まずは日本が立て続けに相手にパスカットをされ、なかなかリズムに乗り切れないでいると、それを払拭するかのように転倒しながら“お返し"のパスカットで相手の攻撃を封じた。
そこから攻撃に転じると、藤本はバンクショットで先取点を決める。さらに、今度は相手エースが放った3Pシュートをブロックした藤本。アテネから4大会連続でパラリンピックに出場するなど、百戦錬磨のベテランらしいプレーが光った。
しかし、試合の主導権を握り切ることはできず、中盤以降は相手のハイポインター陣に得点を許してしまう。なんとか耐えるかたちで、日本は11-12で第1Qを終えた。
停滞気味に感じられた第1Qの雰囲気を一気に払拭し、試合の流れを引き寄せたのが、第2Qだった。ボールマンに対して高い位置からジャンプアップすることで、相手の得点源を封じた日本は、わずか5失点に抑えてみせた。
さらに新しく取り入れたディフェンスリバウンドへの強い意識と、トランジションの速さで得点チャンスを作りだした日本は、香西宏昭を中心に得点を積み重ね、逆転に成功。27-17と引き離し、完全に試合の主導権を握った。
この第2Qの流れを引き継ぐように、続く第3Qでは藤本、鳥海、古澤が、第1Qのリベンジとばかりに競い合うようにしてシュートを決めてみせ、24得点。失点も8に抑え、地力の差を見せつけた。
「40分間、ディフェンスで圧倒すること」を最大のテーマとしていた日本は、タイを37点というロースコアに抑えて圧勝。及川HCも「試合全体を通して、全員がディフェンスに集中していたことが良かった」と高く評価した。
圧勝というかたちで白星スタートを切った男子日本代表。明日の予選リーグ第2戦では、アジア最大のライバルであるイランと対戦する。
「イランの高さと、日本のスピードという勝負になる。相手がオフェンスリバウンドに飛び込むよりも、早く自陣に戻って守らなければいけない、と意識させるようなトランジションの速さが重要になってくる」と及川HC。今大会ヤマ場の一つである明日は、日本の最大の武器が勝敗のカギを握る。
同じく初戦を迎えた女子日本代表は、オーストラリアと対戦した。3カ月前の国際親善試合「三菱電機 WORLD CHALLENGE CUP」でのエキシビジョンマッチでは、2勝1敗と勝ち越した相手だけに、日本は勝利しか考えていなかった。
昨年の世界選手権以降、若返りを図り、再スタートを切ったオーストラリアに対し、日本は実力の差を見せつけるかのように、第1Qは10-2とリードを奪った。
しかし、一方ではシュートの確率が上がらず、なかなかリズムに乗り切れずにいたことも事実だった。それが第2Q以降に大きく響いた。高さで日本を上回るハイポインター陣たちが本領を発揮して得点を重ねていくオーストラリアに対し、日本のシュートはゴールから嫌われ続けた。
それでも、なんとか打開しようと戦い続けた日本。特に第4Qで奮闘した姿を見せたのが、萩野真世だ。序盤、得意のミドルシュートに、ゴール下で転倒しながらのレイアップシュートと、立て続けに得点を挙げた萩野。中盤には粘り強いディフェンスで、自分よりも2倍以上も高い相手のハイポインターからボールを奪うなど、攻守にわたって活躍した。
さらにこの試合、シュートが思うように入らず、苦しみ続けた網本麻里の鮮やかなミドルシュートで試合を終えたことが、チームの最後まで戦う姿を示していた。
思わぬ黒星でスタートを切った日本だが、まだ戦いは始まったばかりだ。オーストラリアとは予選リーグでもう一度対戦するチャンスがある。「これまで積み上げてきたことを出せば、必ず勝てる」と岩佐義明HC。チームスローガンである「一致団結」で、勝利を目指す。
(文・斎藤 寿子、撮影・峯 瑞恵)