12月4日、2019アジアオセアニアチャンピオンシップス(タイ・パタヤ)では予選リーグ最終戦が行われた。男子日本代表はオーストラリアに64-61で競り勝ち、これで4勝1敗として予選1位通過を決めた。一方、女子日本代表は中国に37―52で敗れ、予選は4戦全敗となった。
「明日のオーストラリア戦は、日本がワールドレベルにいけるかどうかが試されるゲームになる」
昨年の世界選手権で銅メダルを獲得したオーストラリア。その強豪が相手となった予選リーグ最後にして最大のヤマ場を前に、及川晋平HCはそう語っていた。そして、こう自信を見せていた。
「オーストラリアとのガチンコ勝負になることが予想されるが、それは日本としては望むところ。そういう展開にもっていきたい」
まさにその言葉が体現された試合となったーー。
第1クォーター、今大会初めて試合のスタートで抜擢されたラインナップが投入された。キャプテンの豊島英、香西宏昭、秋田啓、宮島徹也、岩井孝義という安定感に定評のある5人だ。
及川HCも「こういうビッグゲームでのスタートには強いラインナップ。彼らがうまくやってくれれば、安心して試合に入れる」と全幅の信頼を寄せ、5人をコートに送り出した。
そんな指揮官の期待に応えるかのように、試合の出だしをうまくコントロールし、オーストラリアと互角に渡り合う。第1クォーターは16-17と、その後の展開を示すかのように両者一歩も引かない競り合いが繰り広げられた。
第2クォーターも、35-36。まさに“ガチンコ勝負"の様相を呈して、試合を折り返した。
しかし第3クォーター、日本は中盤に苦しい時間帯が続き、相手に連続得点を奪われ、47-53と6点のビハインドを負った。
そして逆転を狙った勝負の第4クォーター、指揮官が選んだカードは豊島、藤本怜央、秋田啓、古澤拓也、そして緋田高大のラインナップだった。これは相手にとっては、“想定外"だったに違いない。これまでベンチを温めることの多かった緋田が入ったラインナップが、この大事な局面で投入されたことはこれまでには皆無に等しかったからだ。
だが、指揮官には自信があった。
「今回、緋田を12人のメンバーに入れたのは、彼の成長が見えたからです。ディフェンスもいいし、オフェンスでも藤本や秋田をうまく活かしてくれるプレーが一番うまいのは緋田ですからね」
持ち点1.0で小柄な緋田に得点どころかボールを持つシーンはほとんどなく、スタッツのうえではまったく目立たない。だが、ハイポインター陣が果敢に攻め、得点に絡むことができたその陰には、素早く攻守を切り替えて相手をかく乱し、ピックをかけて動きを封じた緋田の好プレーがあった。
第2クォーターのスタートで一度投入されたこのラインナップが、この日のオーストラリアに対して、最も強さを発揮してくれると及川HCは判断したのだろう。そして、それがピタリと的中した。
じりじりと点差を詰めていくと、残り1分で藤本がゴール下でのタフショットを転倒しながらもねじ込んだ。さらにバスケットカウントとして得たフリースローも決め、ついに61-61と同点に追いつく。
そして、勝負を決めたのは、日本の華麗な連携プレーによる得点だった。ボールをコントロールしていた古澤からカットインした豊島にパスが通る。すると豊島は、オーストラリアの超ビッグマンがブロックを狙って突進してきたのを見るや否や、そのままシュートにはいかずに背後から続いてアタックしてきていた藤本にパスを出した。
藤本はそれを見事に決めてみせ、63-61とついに逆転に成功。その後、相手ファウルを受けた藤本がフリースローを1本決め、64-61。試合時間は残り4秒となっていた。
ここでオーストラリアは最後のタイムアウトをとり、戦略を立てた。3Pで同点を狙ってくることはわかりきっていた。日本のベンチでは「とにかく3Pに気を付けろ!2PシュートはOKだから!」という声が飛び交っていた。
そして案の定、オーストラリアは3Pを狙ってきた。世界屈指の好シューターの一人、ショーン・ノリスが放ったボールはネットを揺らしかけたが、リングに跳ね返り、そのままコート上に落ちた。その直後、日本の勝利を示す試合終了のブザーが鳴り響いた。
AOCでのオーストラリア戦初勝利という快挙を成し遂げた日本は、予選リーグ1位通過を決めた。
しかし、「喜ぶのは今日だけ」と及川HC。日本が目指すのは、あくまでも優勝。本当の戦いは、ここから始まる。
一方、中国と2度目の対戦となった女子日本代表は、今大会初勝利を目指した。世界選手権4位の強豪相手に、第1クォーターは10-14と互角に渡り合う。
しかし、第2クォーターで18-31と大きく引き離されてしまった。後半、必死に追い上げようとするも、最後まで中国を崩し切れず、37-52で敗れた。
中国、オーストラリアと2度ずつ対戦し、4戦全敗を喫した日本は、ディビジョン1の3位が決定。6日には、ディビジョン2の上位1チームを加えて行われる準決勝に臨む。
「高さがない日本は、走るバスケをしていかなければならない。そこをもう一度確認をして準決勝に臨みます」と岩佐義明HC。この日、チーム最多の32分間となるプレータイムを誇った北間優衣も「チーム全員が気持ちを切らしてはいない。まだ優勝するチャンスはある。ここから下剋上が始まると思っています」と強気の姿勢を崩さない。
女子日本代表にとって、6日の準決勝が正念場となる。
(文・斎藤 寿子、撮影・峯 瑞恵)