日本代表のエース池崎大輔・池透暢が激しい攻防を繰り広げた
12月20~22日、車いすラグビーのクラブチーム日本一決定戦「三井不動産 第21回 車いすラグビー日本選手権大会」が千葉ポートアリーナ(千葉市)で開催された。
日本中がラグビーワールドカップに熱狂し、“ONE TEAM"が今年を象徴する言葉に選ばれた2019年。そんな、ラグビーイヤーを締めくくるべく、予選を勝ち抜いた全国8つのチームが頂点を目指し熱い戦いを繰り広げた。
大会3連覇中のOkinawa Hurricanesが連覇を伸ばすのか、日本代表のエース、池崎大輔率いる新チーム・TOKYO SUNSの出現が勢力図を変えるのか…大いに注目された今年の大会では、史上最多の4人の外国人選手が出場したことでも話題を呼んだ。
予選ラウンドから決勝までの全20試合、8チーム・全74選手の熱い思いがぶつかりあった今大会。優勝は、予選ラウンドから決勝まで圧倒的な強さを見せたTOKYO SUNS(東京)。結成1年目にして、日本選手権・予選を含む公式戦の全試合で勝利を収める快挙を成し遂げた。
日本代表キャプテンの池透暢がヘッドコーチ(HC)を務めるFreedom(高知)との決勝戦。
日本の両エース、池・池崎が壮絶なスピードバトルを繰り広げ、ニュージーランド代表のヘイデン・バートン(TOKYO SUNS)がフィジカルの強さで突破していく。メンバーの半数が日本代表候補という“スター軍団"に対し、あきらめずにくらいつきターンオーバーを奪っていくFreedom。決勝の舞台にふさわしい、手に汗にぎる32分間の熱戦。池崎が最後のトライを決め、52-44で初優勝をつかみ取った。
池崎は、「チーム一丸となってメンバーみんなが強い気持ちを持ち、コートに出てもベンチにいてもそれぞれが役割を果たして優勝を勝ち取った。まだまだチーム力では足りないところがあるが、優勝という目標を達成できたのはうれしいし安心した」と、戦いを振り返った。
日本代表のチームメイトでもある池崎と今井友明が中心となり「日本全体のレベルアップを図るため若手を育成したい」「車いすラグビーの魅力を発信したい」という思いから昨年秋ごろから準備を進め、今年4月にチーム登録。東京に拠点を置くTOKYO SUNSが本格的に始動した。
「一人ひとりが太陽のように輝き、みんなが陽のあたる場所で活躍できるように」そんな思いを“TOKYO SUNS"というチーム名に込めた。
新チームを立ち上げ走り続けたこの一年を「大変だった」と率直に語った池崎。「アスリートファーストとしてやれる環境を作ってくれるスタッフがいる。結果を残さなければ支えてくれる方に失礼だと思った。やってきてよかった、応援してよかった、そう思えるようなチームでありたい」と優勝にかけた思いを綴った。
惜しくも準優勝に終わったFreedomもまた、特別な思いでこの決勝に臨んでいた。「勝利することは考えていなかった。決勝という大舞台、たくさんの人たちに見られている中で選手たちが自分たちの力を出すこと、勝ち負けに関係なく観客を最後まで楽しませるようなFreedomらしい試合をやり続けようというのが目標だった。決勝の舞台に立てたことに満足している」と清々しい表情で語った池。予選を勝ち上がるために試合に出られなかった選手たちに「最後のコートには立たせてあげたかった」と、メンバー全員が出場し大会を締めくくった。
そして、日本代表の若手として活躍する中町俊耶と橋本勝也を擁するTOHOKU STORMERS(東北)。1勝も挙げることができなかった2年前の大会から地道な努力を重ね、昨年は6位、今大会では結成3年目にして3位という好成績を収めた。経験もモチベーションも違うメンバーが集まるなか、今年は「手をつなぐ」を合言葉に、置いていかれている選手がいないか、みんなで声を掛け合いながら、同じ方向を向いて練習に励んできた。「試合を追うごとにチーム力も上がって、コミュニケーションもよくなっていき、一試合ごとに成長できたいい大会だった」と今年からキャプテンを任された中町は胸を張った。
また、4連覇の期待がかかりながら、予選ラウンド2戦目に攻守の要となるザック・マデル(カナダ代表)が負傷するというアクシデントに見舞われ、8位に終わったOkinawa Hurricanes(沖縄)。HCを兼任する仲里進は「最後までハードワークして、絶対あきらめない姿勢は見せられた。勝つこともそうだが、楽しむことがHurricanesらしさ。また一からチームを作り直して一年間がんばっていきたい」と前を向いた。
いよいよパラリンピックイヤーを迎える今、悲願の金メダル獲得に向け、車いすラグビー日本代表は強度を増していく。だが、その一方で、クラブチームでの活動が彼らのベースにあることも忘れてはならない。
日本代表で培った経験を持ち帰り、それぞれのチーム状況を踏まえ個性を活かしながら一年間積み上げてきたことを発揮する場となるのが日本選手権。勝つことだけではない、数々の名ドラマが生まれる、“クラブチーム"日本一決定戦に今後も注目したい。
(文・張 理恵、撮影・峯 瑞恵)
【結果一覧】
優勝 TOKYO SUNS(東京)
準優勝 Freedom(高知)
3位 TOHOKU STORMERS(東北)
4位 Fukuoka DANDELION(福岡)
5位 BLITZ(東京)
6位 AXE(埼玉)
7位 北海道T×T Big Dippers(北海道)
8位 Okinawa Hurricanes(沖縄)