9月13日、日本パラカヌー選手権大会が木場潟カヌー競技場(石川県小松市)で行われた。来年度の国際大会派遣選手の一次選考を兼ね、男女障害クラス別にカヤック(KL)ヴァー(VL)の2種目が実施された。2019年8月にハンガリーで行われた世界選手権で5位となり、東京パラリンピックに内定している瀬立モニカ(江東区カヌー協会)が女子KL1を1分5秒069で制した。
瀬立は1週間前の練習時に肋軟骨を疲労骨折して万全ではない中での出場であったが、「今自分ができる最大限の漕ぎはできた」とレースを振り返り、来年の東京パラリンピックについては「開催されることを願うとともに、ベストなパフォーマンスができるようにしたい」と笑顔で話した。
今井航一(コロプラ)が男子VL3を58秒645、男子KL3を57秒844で制し、2冠を達成した。今井は「ヴァーはバランスを気にしなくてもいいので、全部の体重と力をのせて漕げる。世界(のレベル)に近い。東京パラ出場を目指してヴァーに重点をおく」と東京パラ出場への意気込みを語った。
【優勝者一覧】
KL1男子
高木裕太(インフィニオンテクノロージズジャパン) 1分14秒330
KL2男子
辰己博実(テスエンジニアリング) 57秒071
KL3男子
今井航一(コロプラ)57秒844
KL1女子
瀬立モニカ(江東区カヌー協会) 1分5秒069
KL2女子
宮嶋志帆(埼玉県カヌー 協会) 1分14秒162
KL3女子
加治良美(ネッツトヨタ名古屋) 56秒255
VL1男子
関根徹哉(江東区カヌー 協会) 2分27秒903
VL2男子
加藤隆典(岐阜県カヌー 協会パラカヌー部) 1分14秒351
VL3男子
今井航一(コロプラ)58秒645
【パラカヌー 】
下肢に障がいのある選手たちが行うカヌーは、200mのタイムを競う「スプリント」。男女別に、障がいの程度に応じてクラスが分かれてレースが行われる。
使用する艇が異なり「カヤック」と「ヴァー」の2種目がある。「カヤック」はパドルの両端に「ブレード」と呼ばれる水かきが付いた「ダブルブレードパドル」を使用。一方、「ヴァー」には片側に「アウトリガー」と呼ばれる浮力体が付いており、パドルもブレードが片側のみの「シングルブレードパドル」を使用する。
レースは、流れのない静水の水上に設定された直線コースで行われ、ひとつのコースの幅は9m。そのうち中央の4m幅が漕行エリアとなっている。漕行エリアから左右どちらかにはみ出した場合は、コースアウトで失格となる。
障がいの軽いクラスでは、クロスバイクと変わらない時速で200mをわずか40秒でゴールする選手もおり、「水上のF1」と言われている。一方、障がいの重いクラスでは体幹を使えない選手もいる。足の踏ん張りも、体幹の力も使わずに、主に両腕の力だけで漕ぐのは至難の業。さらに自然の中で行われるため、天候や場所によって条件はさまざま。わずかな風や波でも、両腕だけでバランスを保ちながら、真っすぐに漕ぐことは見た目以上に難しい。