日本記録を更新した喜びをコーチと分かち合う坂元智香
10月3日、第3回パラ・パワーリフティングチャレンジカップ京都大会がサン・アビリティーズ城陽(京都市城陽市)で開幕し、4つの階級で日本記録が更新された。本大会は新型コロナウイルス感染防止のため、無観客での開催となり、競技の様子はライブ配信された。
「驚きが一番。」
そう話すのは、女子79Kg級に出場した坂元智香(医療法人メディアケアアライアンスあおぞら病院)。第3試技で77Kgを上げ、自身の持つ日本記録を更新するとともに、東京2020の最低出場資格基準(MQS)を突破した。「国内の大会でしっかりとMQSをとれたことを評価しながらも、国際大会になるとさらに試技に対しての目が厳しくなるので、さらに精度をあげていきたい。」と試合を振り返った。
大会2日目、男子65Kg級に出場した奥山一輝(サイデン化学株式会社)は、第1試技から日本新記録144Kgに挑戦し、難なく成功。続く第2試技には148Kgを軽々とあげてみせ、さらに記録を更新した。最終第3試技では、2020年2月の全日本パラ・パワーリフティング選手権大会にて、自身が樹立した日本記録141Kgを、10Kg上回る151Kgに挑戦した。鋭い目つきでベンチプレス台にあがり自身に喝を入れ、力強くバーをおしあげた。判定は成功を示す白判定。判定が下された瞬間、大きな叫びで喜びを露わにした。
最優秀選手賞を受賞し、男子88Kg級で優勝した大堂秀樹(SMBC日興証券株式会社)は、昨年2月に左大胸筋を肉離れし、今回は調整の大会となった。コロナ禍での大会開催について大堂は、「大会自体が開かれるかどうか心配だったが、よく開いてくれたなという感謝。ひとりひとり試技が終わったごとに消毒をしてくれるなど、そこまでして(大会を)やってくれることが本当にありがたかった。」と話した。
【優勝者一覧】
■女子41kg級
山本小百合 45Kg
■女子45kg級
成毛美和(APRESIA Systems株式会社) 59Kg、女子ベストリフター
■女子55kg級
中村光(日本BS放送株式会社) 57Kg
■ジュニア55kg級
見崎真未 45Kg
■女子61kg級
龍川崇子(EY Japan) 67Kg 日本新記録
■女子67kg級
水江加奈子(アムジェン株式会社) 60Kg
■女子79kg級
坂元智香(医療法人メディアケアアライアンスあおぞら病院) 79Kg 日本新記録、東京2020MQS突破
■ジュニア59kg級
大宅心季 85Kg
■男子49kg級
西崎哲男(株式会社乃村工藝社) 138Kg 日本新記録
■男子54kg級
加藤尊士(豊田市役所) 126Kg
■男子59kg級
光瀬智洋(シーズアスリート/株式会社アソウ・アルファ) 135Kg
■男子65kg級
奥山一輝(サイデン化学株式会社) 151Kg 日本新記録
■男子72kg級
城隆志 137Kg
■男子88kg級
大堂秀樹(SMBC日興証券株式会社) 185Kg 最優秀選手賞、男子ベストリフター
■男子97kg級
馬島誠(日本オラクル株式会社) 157Kg
■男子107kg級
中辻克仁 193Kg
■男子107kg超級
松崎泰治 158Kg
【パワーリフティング】
下肢に障がいがある選手が行うベンチプレス。障がいの種類や程度に応じたクラス分けはなく、男女それぞれ体重別に10階級で試合が行われる。各選手3回ずつ試技を行い、持ち上げたバーベルの重量を競う。
選手は全身が乗るようにつくられた特殊なベンチプレス台の上に仰向けの状態となって試技を行う。足で踏ん張るなど下半身の力を使うことはできないため、主に上半身の力だけでバーベルを持ち上げる。審判の合図でラックから外したバーベルを一度、胸まで下ろし、停止させる。そこから腕を伸ばして、バーベルを一気に持ち上げる。この時、左右がバランスよく真っすぐ上がっているかが重要。3秒間、持ち上げた状態をキープし、白い旗が2本以上あがれば「グッドリフト」の合図が出て試技成功となる。入場から試技終了までの一連の流れを2分以内に行わなければならないため、短時間でいかに集中力を高められるかが問われる。
試技中は静まり返っている会場が、「グッドリフト」の合図とともに歓喜の渦に包まれる。緊張した雰囲気から一気にヒートアップする様子を楽しむことができるのも、パワーリフティングならではの魅力だ。