実力者がしのぎを削った男女混合10mエアライフル伏射(SH1)
11月7日・8日の2日間、第33回全日本障害者ライフル射撃競技選手権大会が、nexライフル射撃場(宮城県石巻市)で開催された。
当大会は、新型コロナウイルスが流行し東京パラリンピックの延期が決定してから初めての全国大会で、全国から28名の選手が集い、熱い戦いを繰り広げた。
大会1日目、国内のパラ射撃選手で唯一東京パラリンピック代表に内定している水田光夏(株式会社白寿生科学研究所)は、男女混合10mエアライフル伏射のSH2クラス(上肢に障害があり、支持スタンドを使用する選手のクラス)で優勝し、2連覇を果たした。
本種目では、1時間以内に合計60発(1シリーズ10発・計6シリーズ)を撃ち、その合計を競う。1発の満点は10.9点とされており、最大654.0点となる。
常に自己ベストの更新を目標としている水田だが、今回の結果は633.2点と昨年の同大会記録の633.3点にはわずかながら及ばず、「去年よりも点数が低かったので、悔しいです」と唇をかんだ。
また、男女混合10mエアライフル伏射のSH1クラス(下肢に障害のある選手のクラス)では、本大会唯一のファイナルが行われた。ファイナルでは、佐々木大輔(東京)、渡邊裕介(渡辺石灰株式会社)、片山友子(株式会社ベリサーブ)の接戦となり、一時片山にリードされていたが、最後まで安定感を見せた佐々木が逆転し、頂点を勝ち取った。
今回は、機械トラブルが発生する場面もあったが、「自粛中にメンタルトレーニングの本を読んで、たくさんのヒントを得た。本から学んだことを実践してみたらうまく落ち着けたので、とてもいい練習になった」と佐々木は試合を振り返った。
大会2日目は、男女混合50mライフル伏射のSH1クラスで渡邊裕介が優勝した。風が弾の軌道に大きく影響する本種目。当日は風が強く、選手たちを翻弄したが、「普段から風を想定した練習をしてきたので、風に大きな痛手を受けない射撃ができた」と渡邊は語った。
【優勝者一覧】
AR60M-SH1 望月貴裕(中部電力ミライズ株式会社)
AR60MW-SH2 木下裕季子(オフィス木下)
AP60M-SH1 森脇敏夫(株式会社ぎょうせい)
AR60PRMW-SH1 佐々木大輔(東京)
AR60PRMW-SH2 水田光夏(株式会社白寿生科学研究所)
BR60TMW-SH1 佐伯龍之介(兵庫)
BR60TMW-SH2 増田眞美子(埼玉県身体障害者ライフル射撃連盟)
BR40FMW 黒田恭亮(大阪府立稲スポーツセンター)
BP60MW-SH1 鈴木努(EY Japan)
BR40FMW団体 神戸市障害者射撃協会 佐伯龍之介、清水颯基、松本裕司
FR3X40W-SH1 武樋いづみ(高知県ライフル射撃協会)
FR60PRMW-SH1 渡邊裕介(渡辺石灰株式会社)
(文・湯谷 夏子、撮影・峯 瑞恵、湯谷 夏子)
【射撃】
制限時間内に規定の弾数を撃ち抜き、その合計得点を競う競技。「ライフル」と「ピストル」があり、それぞれ障がいの種類や程度、撃つ姿勢によってクラスが分かれている。
的の中心から離れるほど得点は低くなるが、例えばエアライフルは標的までの距離が10m。その距離でパラリンピックに出場するようなトップクラスの選手は、5円玉の穴ほどしかない0.5mmの大きさの「10点台」を撃ち抜くのは当然の世界。さらに中心からわずかなズレによって「10.0」から「10.9」まで細かく刻まれるため、コンマの差で勝敗が分かれる。
寸分の狂いなく撃ち抜くには、高い集中力が必要で、自分自身の呼吸のリズムや心臓の鼓動までもコントロールする必要がある。しかし、時間制限内に60発を撃たなければいけないため、一発にかける時間は意外にも少ない。次々と撃ち込んでいかなければならず、シューティングフォームを体にしみこませ、いかに短い時間に集中力を高められるかが重要となる。