11月15日、大分車いすマラソン2020が大分市内で開催され、大分県庁前をスタートし大分市営陸上競技場をゴールとするコースで行われた。本大会は、本来であれば国内外から多くの有力選手が参加する国際大会だが、今年は新型コロナウイルスの影響により国内選手のみの参加に限定。マラソン、ハーフマラソンの各競技に合計107人がエントリーし、全出場選手のPCR検査、沿道の応援への自粛要請など、様々なコロナ対策を行った上での実施となった。
T54男子フルマラソンでは東京パラリンピック出場が内定している鈴木朋樹(東京都)が1時間22分02秒で優勝。スタート直後からハイペースでトップをキープし、10キロ手前から独走状態となった。「今までの競技人生の中で一番ハードなレースとなった、タイムは見ずに自分自身の体力と戦った」と振り返った。今後に向けて鈴木は「(ライバルである)マルセル選手やダニエル選手と戦う機会が多くなってくると思うので、しっかりと調整していきたい」と話した。
T54女子フルマラソンは土田和歌子(東京都)が1時間39分42秒で2012年の第32回大会ぶりの女王の座に返り咲いた。マラソンとトライアスロンの2種目で東京パラリンピック出場を目指す土田は、前日行われた選手記者会見で、「2019年から行なっているトライアスロンのトレーニングは、非常に耐久力がつくし、3種目で色々な動き用いることがマラソンへも大きな影響を与えている」と話していた通り、2位の喜納翼(沖縄県)に約2分の差をつけてゴールする展開となった。
T34/53/54男子ハーフは久保恒造(北海道)が43分42秒、T34/53/54女子ハーフは安川祐里香(沖縄県)が57分36秒で優勝した。
【結果一覧】
マラソン
・男子T34/53/54
優勝 鈴木朋樹(東京都) 1:22:02
2位 山本浩之(福岡県) 1:26:44
3位 渡辺 勝(福岡県) 1:26:44
・男子T33/52
優勝 佐藤 友祈(岡山県) 1:49:29
2位 上与那原 寛和(沖縄県) 1:49:29
・女子T34/53/54
優勝 土田 和歌子(東京都) 1:39:42
2位 喜納 翼 (沖縄県) 1:41:24
ハーフマラソン
・男子T34/53/54
優勝 久保恒造(北海道) 0:43:42
2位 城間圭亮 (長崎県) 0:44:54
3位 渡辺習輔 (大分県) 0:44:55
・男子T34/53/54
優勝 伊藤竜也(福井県) 0:57:48
2位 髙田稔浩 (福井県) 1:09:32
3位 今井義隆 (大阪府) 1:12:17
・女子T34/53/54
優勝 安川 祐里香 (沖縄県) 0:57:36
2位 見﨑 真未(熊本県) 1:09:32
3位 西山 美沙希(大分県) 1:55:28
・女子T33/52
優勝 片平 留依 (福岡県) 1:45:35
【陸上】
一般の陸上競技と同じく、「短距離走」「中距離走」「長距離走」「跳躍」「投てき」「マラソン」と多岐にわたった種目が行われる。
障がいの種類や程度に応じて男女別にクラスが分かれ、タイムや高さ、距離を競う。選手たちは、「義足」「義手」「レーサー」(競技用車いす)など、それぞれの障がいに合った用具を付けて、パフォーマンスを磨いている。
用具の進化によって、選手のパフォーマンスが上がっていることは事実だが、決して用具頼りの記録ではない。用具を使えば技術が上がるわけではなく、選手には使いこなすだけの身体能力、筋力、バランスなどが必須となる。
視覚障がいのクラスでは、選手に伴走する「ガイドランナー」や、跳躍の際に声や拍手で方向やタイミングなどを伝える「コーラー」などといったサポーターの存在も重要となる。選手とサポーターとの信頼なくしては成り立たず、息の合ったやりとりはふだんの練習の賜物でもある。
クラスによっては、オリンピックにも劣らないレベルの記録が出るなど、時代とともにレベルが高くなっており、毎大会トップ選手の記録更新が注目されている。多種多様な障がいの選手が一堂に会し、さまざまな工夫を凝らし、自分自身の限界に挑む姿が見られるのが、この競技の魅力でもある。