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2021年1月31日

第21回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会

嬉し涙に悔し涙、若手がみせた自分との戦い

画面越しでも伝わる迫力ある試合展開 | 嬉し涙に悔し涙、若手がみせた自分との戦い
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画面越しでも伝わる迫力ある試合展開

 
 1月30日〜31日、第21回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会が千代田区立スポーツセンター(東京都千代田区)で開催された。新型コロナウイルス感染拡大の影響で海外選手は不参加となったが、全国から33名の選手が集まり、18階級中4階級で日本新記録が樹立された。
 今大会は無観客試合となり、競技会場に入ることができるのはPCR検査を受けた選手・スタッフのみで、メディアはアップ会場に隣接したパブリックビューイング会場での取材となった。

コーチと入念に調整する光瀬智洋 | 嬉し涙に悔し涙、若手がみせた自分との戦い
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コーチと入念に調整する光瀬智洋

 
 大会初日、男子59kg級に出場した光瀬智洋(シーズアスリート/株式会社アソウ・アルファ) は、戸田雄也(北海道庁)が持つ日本記録を1kg上回る141kgをあげ、日本記録を更新し優勝した。これまでも日本記録に挑戦してきたが、戸田との争いに何度も敗れ、勝ちきれずにいた。
 「なんとも言えない気持ち。3、4回目のチャレンジでやっと日本新記録が取れた。」と振り返った本大会は、第一試技に133kg、第二試技では自己ベストとなる137kgに挑戦し、難なくクリア。勝負の第三試技では、日本新記録となる141kgに挑み、惜しくも2つの赤判定がつき失敗となった。判定後すぐにもう一度というジェスチャーをし、特別試技で再度日本新記録への挑戦を申請した。特別試技では、残り制限時間1分を切ってからベンチ台にあがり、少し急ぎ足での準備となったが、いつもと変わりなく燃え上がる気迫で試技に入り、瀬尾コーチの「お願い!いけー!」という声とともに力強くバーを押しあげた。結果、白2、赤1の判定でクリアとなり、「よっしゃー」と声をあげて喜びながら嬉し涙をこぼした。

納得のいく結果が出せず悔し涙を浮かべる奥山一輝 | 嬉し涙に悔し涙、若手がみせた自分との戦い
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納得のいく結果が出せず悔し涙を浮かべる奥山一輝

  
 大会2日目には重量級の選手たちが登場。
昨年の10月に京都で行われた第3回パラ・パワーリフティングチャレンジカップ京都大会で日本記録を塗り替え、大会ごとに大きな成長を見せている男子65kg級の奥山一輝(サイデン化学株式会社)は、第一試技で147kgに成功するも、その後は第二試技、第三試技、特別試技と3連続で152kgに挑戦するもあげきれず、本来の力が出しきれずに終わった。最終的に順位は1位でパラリンピックの出場資格基準(MQS)の135kgを大きく上回る成績となったが、試技直後のインタビューでは「普段通りできず困惑し、そこから立ち直せなかった。いつも助けてくれている方々に申し訳ない」と悔し涙を滲ませながら語った。

 過去3大会連続でパラリンピックに出場している男子88kg級の大堂秀樹(SMBC日興証券株式会社)は、第一試技の166kg、第二試技の174kgと続けて安定感のある試技を見せ成功。第三試技は180kgを軽々上げ切るも、胸の上での止めが浅く結果は失敗。試技後のインタビューでは「全く止まっていなかったのが自分でもわかった。押し切りは軽かったのでちゃんと止めればよかった」と冷静に試技を振り返った。最近は不調が続いていたという大堂。インタビューの最後には、「今回の経験を活かして今後は調子を上げていきたい」という前向きなコメントを残して会場を後にした。
 
試合前に集中力を高める宇城元 | 嬉し涙に悔し涙、若手がみせた自分との戦い
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試合前に集中力を高める宇城元

 
 72kg級には、80kg級で日本記録を持っている宇城元(順天堂大学)が出場。コロナ禍でトレーニングができなかった期間に何かできることはないかと考え、東京パラリンピック出場可能性を高めるために72kg級にも挑戦する決断をしたと言う。72kg級の日本記録を保持する樋口健太郎との戦いの末、樋口の日本記録の175kgを1kg上回る176kgの記録を出した宇城が優勝。樋口の日本記録を塗り替え、2つの階級で日本記録を保持する選手となった。

三度目の挑戦で日本新記録を手にした佐藤和人 | 嬉し涙に悔し涙、若手がみせた自分との戦い
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三度目の挑戦で日本新記録を手にした佐藤和人

 
 40代の選手が4名出場した97kg級では手に汗握る熱戦が繰り広げられた。第三試技までに佐藤芳隆と佐藤和人が、馬島誠(日本オラクル株式会社)の持つ日本記録に並ぶ160kgに成功するも、第一試技、第二試技と全て白判定で安定感を見せていた馬島が161kgに成功。自身の自己記録と日本記録を1kg更新した。しかし第三試技後、特別試技への挑戦に佐藤(和)が名乗りを上げた。特別試技の結果は大会の結果には反映されないが、日本記録や個人の記録を更新した場合は記録として認定される。そんなチャンスに果敢に挑戦した佐藤(和)。第二試技、第三試技と惜しくも上げきれなかった165kgに挑んだ。結果、試技は成功。馬島が出した日本記録がすぐに塗り替えられる結果となった。

 今大会最重量級の107kg級には中辻克仁が登場。自己記録の202kgを超える203kgに挑むも、惜しくも失敗。試技後は「意外とスムーズに上がったが、右側がぶれた感覚があった。今後はさらに体づくりに力を入れていき、国際大会に備えていきたい」と今大会を振り返りつつ未来に目を向けた。
 
【優勝者一覧】
■女子41kg級
佐竹三和子 47Kg
■女子45kg級
成毛美和(APRESIA Systems株式会社) 56Kg
■女子55kg級
中村光(日本BS放送株式会社) 56Kg
■ジュニア55kg級
見﨑真未 43Kg
■女子61kg級
龍川崇子(EY Japan) 65Kg
■女子67kg級
森崎可林 66Kg
■男子49kg級
西崎哲男(株式会社乃村工藝社) 136Kg
■ジュニア49kg級
中川翔太45Kg ジュニア日本新記録
■男子54kg級
市川満典(株式会社コロンビアスポーツウェアジャパン) 135Kg
■男子59kg級
光瀬智洋(シーズアスリート/株式会社アソウ・アルファ) 137Kg
 (特別試技:141Kg(日本新記録))
■男子65kg級
奥山一輝(サイデン化学株式会社) 147Kg
■ジュニア65kg級
井内英人 50Kg
■男子72kg級
宇城元(順天堂大学) 176Kg 日本新記録
■男子80kg級
斉藤伸弘 160Kg
■男子88kg級
大堂秀樹(SMBC日興証券株式会社) 174Kg 
■男子97kg級
優勝 馬島誠(日本オラクル株式会社) 161Kg
3位 佐藤和人 特別試技 165Kg 日本新記録
■男子107kg級
中辻克仁 195Kg

【パワーリフティング】
 下肢に障がいがある選手が行うベンチプレス。障がいの種類や程度に応じたクラス分けはなく、男女それぞれ体重別に10階級で試合が行われる。各選手3回ずつ試技を行い、持ち上げたバーベルの重量を競う。
選手は全身が乗るようにつくられた特殊なベンチプレス台の上に仰向けの状態となって試技を行う。足で踏ん張るなど下半身の力を使うことはできないため、主に上半身の力だけでバーベルを持ち上げる。審判の合図でラックから外したバーベルを一度、胸まで下ろし、停止させる。そこから腕を伸ばして、バーベルを一気に持ち上げる。この時、左右がバランスよく真っすぐ上がっているかが重要。3秒間、持ち上げた状態をキープし、白い旗が2本以上あがれば「グッドリフト」の合図が出て試技成功となる。入場から試技終了までの一連の流れを2分以内に行わなければならないため、短時間でいかに集中力を高められるかが問われる。
試技中は静まり返っている会場が、「グッドリフト」の合図とともに歓喜の渦に包まれる。緊張した雰囲気から一気にヒートアップする様子を楽しむことができるのも、パワーリフティングならではの魅力だ。

嬉し涙に悔し涙、若手がみせた自分との戦い
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