「2017IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップス」(AOZ)5日目、女子日本代表は3位決定戦でイランと対戦し、76–19で快勝。今大会を勝利で終え、次へのステップとした。
【気持ちを切り替えて臨んだ三決】
前日の準決勝でオーストラリアに敗れ、来年8月の世界選手権への出場権を逃した女子日本代表。その日の夜、全体ミーティングの際、予想以上に選手たちは気持ちを切り替えていたという。
その時の様子を、橘香織ヘッドコーチ(HC)は、こう語る。
「もちろん、たった数時間では消化しきれない部分もそれぞれあったと思います。ただ、今日のイラン戦に向けては、『いつもの通り、しっかりとやることをやる』と。予想以上に選手たちは前向きでいてくれました」
しかし、やはり世界選手権を逃したショックは、1日では払拭することができなかった選手もいたのだろう。今日の午前中の練習では、いつも通り声は出ていたものの、どこか上の空の選手が少なくなく、うまくいかない部分があったという。
ところが、試合に入ると、選手たちはスタートからアグレッシブにプレーし、求められたボールマンへのプレッシャーも積極的な姿勢がうかがえた。実は練習後に選手ミーティングを開き、キャプテンの藤井郁美はこうチームメイトを鼓舞したという。
【チーム力アップに必要な個々のスキル】
この日のディフェンスは、オールコートのプレスディフェンスではなく、ハーフコートからボールマンに強くプレッシャーをかけていく、あるいはスリーポイントラインに沿って半円のかたちに並ぶ「ティーカップ」ディフェンスに終始した。その理由を橘HCはこう説明してくれた。
「このチームは、どちらかというとプレスに自信を持っていて、頼りがちになる傾向があるんです。でも、プレスをしかなくても、自分たちはこれだけ守れて得点することができるんだ、ということをわかってもらいたかったんです」
その狙い通り、この日のスコアは得点75、失点19。しっかりと結果を残した。
「昨日のオーストラリア戦は、やるべきことをやれずに負けたのだから、もう一度一つ一つ丁寧に、精度高く、強くやっていこう」
その言葉に、選手たちは背中を押されるように、試合では最後まで集中した姿を見せた。特に、前日までなかなか思うようなプレーができず、影を潜めていた網本麻里が、この日はチーム最多の20得点をマークし、ようやく本来のプレーでチームを鼓舞したことは大きかった。
また、この試合では、20代の若手に多くの出場時間が与えられた。それは「これからは、あなたたちの世代が頑張らなくてはいけない」という指揮官からのメッセージがこめられていたという。
果たして、選手たちはこの指揮官の思いをどう受けとめ、そして今後へとつなげていくのか。
キャプテンの藤井は言う。
「とにかく今は悔しいという思いしかありません。チームも、そして私も、こんなものではない。でも、本番で力を出せないということが、実力のなさを示している。ここからどうはいあがっていくのか、だと思います」
そして、こう続けた。
「私も含めて、選手個人個人、相当なスキルアップが必要で、それがあってこそのチーム力、戦術・戦略なのだと思います。コーチ陣が考えてくれている戦術・戦略をコート上で実行できる選手がどれほどいるかでチーム力はかわってくる。ですから、これからは一人一人が、さらに責任を持って取り組んでいくことが何より大事になってくると思っています」
果たしてこれまでの日々、どれだけ選手たちが「責任」を自覚して取り組んできたのかは、今大会の結果に表れているのかもしれない。そして、今大会でそのことに気づき、本気で「責任」を持って取り組む選手がどれほどいるのか。東京パラリンピックでの結果は、それ次第ということになるのだろう。
「闘う集団」への道のりは、これからが正念場を迎える。
(文・斎藤寿子、写真・岡川武和)