Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア
2021年3月7日

Challenge Tokyo Para 42.195km in 立川

喜納が東京パラ内定有力 男子は洞ノ上優勝も厳しい結果に

目標タイムに向けて序盤からハイペースでレースを展開する選手たち | 喜納が東京パラ内定有力 男子は洞ノ上優勝も厳しい結果に|Challenge Tokyo Para 42.195km in 立川 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

目標タイムに向けて序盤からハイペースでレースを展開する選手たち

3月7日(日)、2021車いすマラソンスペシャルレース「Challenge Tokyo Para 42.195km in 立川」が、陸上自衛隊立川駐屯地内(東京都立川市)で開催された。

東京2020大会延期と新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、世界パラ陸上競技連盟(WPA)は昨年、マラソン参加資格ランキングによる選考方式を導入した。
具体的には、2019年4月1日から2021年4月1日までの24カ月間に行われたWPA 公認レースを対象に記録をランキング化し、今年4月1日時点での世界ランキング(マラソン参加資格ランキング)6位以内、さらに世界選手権での内定者を除いた上位2名に参加枠を割り当てるというものだ。
車いすマラソンでは各国男女それぞれ3名が出場できるが、現在、日本代表に内定しているのは、2019年4月の世界選手権で男子3位となった鈴木朋樹ただひとり。
そのため、日本代表選考会の位置づけとして行われたこのレースは、東京パラリンピック出場を狙う選手たちに与えられた「ラストチャンス」となった。

WPA 公認の今大会には男子9名、女子2名がエントリー。
自己ベストでは目標タイムを上回る記録を持つ選手もおり、ランキングを上げるためこのレースにかける意気込みは強い。
東京パラリンピックへの切符を手にするためには、前述の通り、すでに内定を決めている選手を除いた世界ランキング上位2名を上回るタイム(※)を叩き出すことが条件となる。

※(男子)<1位>Pike Aaron(アメリカ)1時間20分59秒 <2位>Monahan Patrick(アイルランド)1時間22分23秒
(女子)<1位>喜納翼(日本)1時間35分50秒 <2位>Gerhard Katrina(アメリカ)1時間36分26秒

トップ集団で粘り強い走りを見せた洞ノ上浩太 | 喜納が東京パラ内定有力 男子は洞ノ上優勝も厳しい結果に|Challenge Tokyo Para 42.195km in 立川 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

トップ集団で粘り強い走りを見せた洞ノ上浩太

レースは1周約2.6kmのコースを16周する形式で行われた。わずかな傾斜があるくらいのほぼフラットな周回コース。記録を出すためには、スタートから積極的、かつ、風の抵抗と体力の消耗を抑えるため、ライバルでありながらも協力し合って先頭を交替しながらレースを展開することが必要となる。

前日の春本番を思わせる陽気とは打ってかわり、どんよりとした寒空の下、スタートの時を迎えようとしていた。
リラックスした表情で時折笑顔を見せる選手、集中力を高める選手…
無観客での開催となった会場は、緊張の一瞬を前に静まり返った。

午前10時。
気温7度、北寄りの風が吹くなか、男女11名の選手が勢いよく直線コースに飛び出していった。
スタートから積極的に攻めの走りを見せる選手たち。リズムを刻みながら腕を振り下ろし、前へ前へと進んでいく。
しかし、早くも2週目に入ったころで、先頭集団を形成したのは樋口政幸(プーマジャパン)、吉田竜太(SUS)、洞ノ上浩太(ヤフー)、副島正純(ソシオSOEJIMA)のわずか4選手。そのあとに3選手による2位集団が続き、その差はどんどんと開いていく。
先頭集団にいた洞ノ上は「こんなに早く4人になるのか…でもこのペースでいかないと記録は出ない。後ろにいる選手は着いてくるしかない」と思ったという。
一方の女子は、日本の女子車いすマラソン界を牽引してきた土田和歌子(八千代工業)と著しい成長を見せる喜納翼(タイヤランド沖縄)が先頭を交替しながら淡々とレースを進める。
そんな中、10km過ぎには、2位集団にいたマラソン参加資格ランキング日本人最上位(鈴木朋樹を除く)の渡辺勝(凸版印刷)がリタイアするというハプニングが起きた。

長方形のコースは向かい風と追い風が交互にやってくる。アップダウンのあるロードとは異なり下りでスピードに乗り体を休ませることもできないため、常に車いすを漕ぎ続けなければならず、体力が削られていく。

ハーフでの目標タイムは男子が41分11秒、女子は48分13秒。
トップでハーフを通過した吉田(竜)は44分33秒、女子は喜納と土田が同タイムで51分41秒。記録更新には厳しい状況となった。

レース後半。
女子は喜納が土田を引っ張っていく。
男子では、ハーフまで先頭集団にいた樋口が、ペースメーカーの役目を終えたと言わんばかりに遅れだすと、1周遅れでまた先頭集団に加わり、仲間たちに拍車をかけるようにペースキープを買ってでるといった周回コースならではの光景も見られた。

最後は、洞ノ上が1時間30分40秒でフィニッシュして小さくガッツポーズ、2秒遅れでゴールに飛び込んだ吉田(竜)は悔しさをにじませた。
そして、女子は喜納が1時間45分04秒、続いて土田が同タイムでゴール。手を取り健闘を称え合った。

男子優勝の洞ノ上は「勝てばいいという今までのレースとは違って難しかった。北京、ロンドン、リオと3大会に出場して、それぞれが過酷な選考レースだった。何がなんでも記録を突破してやるぞという気持ちはすごくあったが残念。このような大会を開催してくれたのに申し訳ない」と硬い表情で語った。

憧れの土田と走れる喜びをレースで表現した喜納翼 | 喜納が東京パラ内定有力 男子は洞ノ上優勝も厳しい結果に|Challenge Tokyo Para 42.195km in 立川 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

憧れの土田と走れる喜びをレースで表現した喜納翼

女子優勝の喜納は「風もあって気温も低いうえに周回コース。どうしてもタイム的には厳しくなるだろうと思っていた。地元の沖縄でも風が強くて40kmという距離を走るという練習ができなかった。そういう中で大会を開いてくれて走れたのは良いトレーニングになった」とレースを振り返った。
また、レジェンドの土田と一緒に走れたことは勉強になったと語り、「やっぱり憧れであることには変わりない。レースの進め方など率先して声をかけてくださって頼りになる先輩」と表情をゆるませた。

この結果により、マラソン参加資格ランキングによる出場枠を割り当てられる可能性があるのは、現在、世界ランキング4位(すでに内定している選手を除けば同1位)の喜納。東京パラリンピック日本代表に内定することが濃厚となった。
今後は、WPA 公認大会でハイパフォーマンス標準記録(※期間:2018年10月1日~2021年6月)を突破した選手によって選考されるハイパフォーマンス割当枠に望みをかけることになる。

厳しいレースを終え、持てる力を発揮できず唇をかみしめる場面も見られた。
しかし、コロナ禍に負けずひたむきに努力を積み重ねた先に今日があった。  
東京パラリンピックへのまっすぐな思いが伝わる、そんな熱いレースとなった。

(文・張 理恵、撮影・峯 瑞恵)

【結果一覧】
男子
優勝 洞ノ上 浩太(ヤフー株式会社) 1:30:40
2位 吉田 竜太(SUS株式会社) 1:30:42
3位 副島 正純(一般社団法人ウィルチェアアスリートクラブ ソシオSOEJIMA) 1:30:55
4位 西田 宗城(バカラパシフィック株式会社) 1:35:27
5位 吉田 高志(奥アンツーカ) 1:37:40
6位 山本 浩之(NPO法人はぁとスペース) 1:38:45
7位 武村 浩生(ヤフー株式会社) 1:44:05
DNF 樋口 政幸(プーマジャパン株式会社) 
DNF 渡辺 勝(凸版印刷株式会社) 

女子
優勝 喜納 翼 (タイヤランド沖縄) 1:45:04
2位 土田 和歌子(八千代工業株式会社) 1:45:04
 
【陸上】
 一般の陸上競技と同じく、「短距離走」「中距離走」「長距離走」「跳躍」「投てき」「マラソン」と多岐にわたった種目が行われる。
 障がいの種類や程度に応じて男女別にクラスが分かれ、タイムや高さ、距離を競う。選手たちは、「義足」「義手」「レーサー」(競技用車いす)など、それぞれの障がいに合った用具を付けて、パフォーマンスを磨いている。
 用具の進化によって、選手のパフォーマンスが上がっていることは事実だが、決して用具頼りの記録ではない。用具を使えば技術が上がるわけではなく、選手には使いこなすだけの身体能力、筋力、バランスなどが必須となる。
 視覚障がいのクラスでは、選手に伴走する「ガイドランナー」や、跳躍の際に声や拍手で方向やタイミングなどを伝える「コーラー」などといったサポーターの存在も重要となる。選手とサポーターとの信頼なくしては成り立たず、息の合ったやりとりはふだんの練習の賜物でもある。
 クラスによっては、オリンピックにも劣らないレベルの記録が出るなど、時代とともにレベルが高くなっており、毎大会トップ選手の記録更新が注目されている。多種多様な障がいの選手が一堂に会し、さまざまな工夫を凝らし、自分自身の限界に挑む姿が見られるのが、この競技の魅力でもある。
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