4月24、25日の2日間、WPA公認2021ジャパンパラ陸上競技大会が屋島レクザムフィールド(香川県高松市)で開催された。東京パラリンピックの日本代表選考に関わる、重要な2日間となった本大会では、9個のアジア新記録、25個の日本新記録、56個の大会新記録、大会タイ記録1個と、数多くの記録が生まれた。
大会1日目に行われたT64クラス男子100mでは、大島健吾(名古屋学院大学)が井谷俊介(SMBC日興証券)がもつアジア記録を0.10秒上回る、11秒37で優勝し、アジア記録を更新した。3月に行われた第32回日本パラ陸上競技選手権大会のレース後のインタビューでは、「自信があったがタイムとして現れなかったのが残念。6月までには11秒47を切りたい」と悔しさを滲ませつつも、アジア記録更新に向けて話していた。その言葉通り2ヶ月でタイムを切ってみせた。レースを振り返って大島は、「今日は11秒28を目指していた。向い風というコンディションの中で自己ベストが出せればいいなと思っていた。パラリンピックの目標としては11秒1くらいで走りたい」と強い眼差しで話した。
大会2日目には、T63クラス女子走幅跳が行われ、東京パラリンピックの代表に内定している兎澤朋美(富士通)が1本目の跳躍で自身のもつアジア記録を12cm更新し、4m56で優勝した。1日目には100mにも出場し、16秒42のタイムで優勝。幅、100mどちらとも、冬に強化した持久力やスピードが、走りに活かされているという。「向かい風の中でもベストを更新できたというのは、追い風で条件が整えばもっといけるんだと認識できた」と振り返った。
【陸上】
一般の陸上競技と同じく、「短距離走」「中距離走」「長距離走」「跳躍」「投てき」「マラソン」と多岐にわたった種目が行われる。
障がいの種類や程度に応じて男女別にクラスが分かれ、タイムや高さ、距離を競う。選手たちは、「義足」「義手」「レーサー」(競技用車いす)など、それぞれの障がいに合った用具を付けて、パフォーマンスを磨いている。
用具の進化によって、選手のパフォーマンスが上がっていることは事実だが、決して用具頼りの記録ではない。用具を使えば技術が上がるわけではなく、選手には使いこなすだけの身体能力、筋力、バランスなどが必須となる。
視覚障がいのクラスでは、選手に伴走する「ガイドランナー」や、跳躍の際に声や拍手で方向やタイミングなどを伝える「コーラー」などといったサポーターの存在も重要となる。選手とサポーターとの信頼なくしては成り立たず、息の合ったやりとりはふだんの練習の賜物でもある。
クラスによっては、オリンピックにも劣らないレベルの記録が出るなど、時代とともにレベルが高くなっており、毎大会トップ選手の記録更新が注目されている。多種多様な障がいの選手が一堂に会し、さまざまな工夫を凝らし、自分自身の限界に挑む姿が見られるのが、この競技の魅力でもある。