Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア
2022年11月27日

MONEY DOCTOR 2022日本ゴールボール選手権大会

萩原紀佳と伊藤雅敏の両日本代表が高い得点能力を発揮 女子は「チーム附属」が5度目の、男子は「Spread Wings」が新体制で初優勝

力強いスローで大会女子最多18得点を記録した萩原紀佳(チーム附属) | 萩原紀佳と伊藤雅敏の両日本代表が高い得点能力を発揮
女子は「チーム附属」が5度目の、男子は「Spread Wings」が新体制で初優勝
|MONEY DOCTOR 2022日本ゴールボール選手権大会 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

力強いスローで大会女子最多18得点を記録した萩原紀佳(チーム附属)

11月26日〜27日に、「MONEY DOCTOR 2022 日本ゴールボール選手権大会」が新宿スポーツセンター(東京都新宿区)で開催された。
新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催になった日本ゴールボール選手権大会だが、女子は「チーム附属」が、男子は「Spread Wings」が頂点に立った。両チームとも攻撃力が際立ったが、堅い守備力も持ち合わせ、決勝では試合の流れを渡さなかった。

世界を見据えてレベルアップ

「この大会は2015、16年と連覇しながら、17年は決勝で敗退。その後は苦しい年もあった中、今年こそはと、1年かけて準備してきました。それだけに優勝できて嬉しいです」
優勝後の選手インタビュー、チーム附属の安室早姫はしみじみとした口調で言った。筑波大附属視覚特別支援学校OGを中心とするチーム附属。予選大会を1位通過した勢いそのままに実力を発揮し、通算5度目の栄冠となった。

けん引役を果たしたのは、萩原紀佳だ。大会を通じて挙げた得点は「18」。萩原は得点王になるとともに大会のMVPにも輝いた。
さらなる飛躍のきっかけになったのが、昨年、チーム最年少で出場した東京パラリンピックだ。大会通算得点ランキング2位の25得点を記録し、銅メダル獲得に貢献したが、世界のレベルを感じたことで向上心が高まったという。

「大きなきっかけは、準決勝で敗れたトルコのセブダ・アルトゥノルク選手です。私はグラウンダー(鈴が鳴りにくいため、相手にボールの位置を悟られづらい)を武器としていましたが、セブタ選手は回転投げ(選手が1回転して投げる。ボールの威力が増すとともに、リリースする直前まで鈴が鳴らない)の両方を駆使して、得点源になっていたのです」
グラウンダーだけでは世界で戦えない―。萩原は回転投げも練習するようになり、2つの投げ分けを磨いているという。今大会ではその成果が発揮された形になった。

12月7日からポルトガルでゴールボール世界選手権(2位以内が2024年のパリ・パラリンピック競技大会の出場権を獲得できる)が開催される。萩原はこの大舞台でも得点源としての期待がかかる。

準決勝、決勝を無失点に抑えた鉄壁の守備(右から安室早姫,萩原紀佳,神谷歩未) | 萩原紀佳と伊藤雅敏の両日本代表が高い得点能力を発揮
女子は「チーム附属」が5度目の、男子は「Spread Wings」が新体制で初優勝
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準決勝、決勝を無失点に抑えた鉄壁の守備(右から安室早姫,萩原紀佳,神谷歩未)

準決勝、決勝を無失点に抑える

前日の予選リーグでは2試合で最多となる計22得点で1位通過。チーム附属は、準決勝、決勝でも計16得点と、圧倒的なオフェンス力を見せつけた。ただ、見逃せないのが、ファイナル、セミファイナルといずれも無失点だったディフェンス力だ。

Moon Lusterを9対0で下した準決勝の後、松村めぐみは「0点に抑えられたのが大きい」と振り返ると、こう続けた。
「予選リーグではちょっとした意思疎通のミスで失点しまいました。準決勝からはそういうことはなくそうと、声かけの共有をチームとして徹底しました。試合中はディフェンスが重なる時もありましたが、その場で気付くなどして、すぐに修正できました」

攻撃は最大の防御、という言葉もあるが、チーム附属は守りにおいても完璧だった。

豪快なスローでチームを優勝に導いた伊藤雅敏(Spread Wings) | 萩原紀佳と伊藤雅敏の両日本代表が高い得点能力を発揮
女子は「チーム附属」が5度目の、男子は「Spread Wings」が新体制で初優勝
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豪快なスローでチームを優勝に導いた伊藤雅敏(Spread Wings)

チーム全体を優先する得点王

男子の頂点に立ったのはSpread Wingsだった。17年大会から3連覇したAmaryllisの元メンバー・スタッフに若手を加えたチームである。
Spread Wingsは予選大会(Pool B)を1位で通過。予選リーグもチーム附属Bには7対6と辛勝ながら1位に。準決勝ではチーム附属Aを10対4で破り、決勝進出となった。

チーム附属Bと再び相まみえることになった大一番。そのパワーで圧倒したのが、日本代表経験も豊富な、大ベテランの伊藤雅敏だった。試合開始11秒過ぎに先制の得点を決めると、前半だけで4得点。後半も3得点した伊藤は、大会通算で22の得点を積み上げ、得点王を受賞した。

だが、優勝を決めた後、大ベテランが口にしたのは得点のことではなかった。「守りが良かったです。ディフェンス面がチームの課題でしたが、落ち着いてやれていたと思います」。得点源の役割を担う世界選手権についても、攻撃ではなく守備のことを言及。「強豪国はバウンドボールにカベを作るのが上手なので」と話した。

日本代表でも最年長らしく、まずチーム全体に目を向ける伊藤だが、東京パラリンピックの経験は、自身にとっても大きな刺激になったという。
「悔いが残らないように選手生活を全うしたい、という心境になりました」
男子はまだ自力でのパラリンピック出場がない。悔いを残さないためにも、世界選手権では自分たちの手でつかみたい、と伊藤は思っている。

大会MVPを獲得した辻村真貴 | 萩原紀佳と伊藤雅敏の両日本代表が高い得点能力を発揮
女子は「チーム附属」が5度目の、男子は「Spread Wings」が新体制で初優勝
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大会MVPを獲得した辻村真貴

繰り返した周囲への感謝の言葉

一方、MVPに選出されたのは辻村真貴。決勝での4得点もさることながら、光ったのがチームリーダーとしての姿だった。Spread Wingsの選手は普段、それぞれの拠点で活動しており、なかなか全員揃っての練習はできない。ともすればチームが1つになりにくい中、仲間を鼓舞する気合がこもった声や、持ち前のコミュニケーション能力の高さで、精神的な支柱となった。

「新体制にはなりましたが、優勝を、前身のAmaryllis時代を含めての4連覇を目指してきました。それが達成できてホッとしてますし、支えてくれた全ての人に感謝したいです」
優勝できたのは選手だけの力ではない。日本代表の経験もある辻村はそう伝えた。

ともにMVPになった萩原と辻村は、大会関係者への感謝の言葉も忘れなかった。
コロナ禍で3年ぶりの開催になった中、このような素晴らしい「場」を作ってくれた―。
その気持ちは出場した選手全てが同じだったに違いない。

【順位】
・男子
1位 Spread Wings
2位 チーム附属B
3位 スーパーモンキーズ

・女子
1位 チーム附属
2位 みなでしこ
3位 Merveilles

【得点王】
男子:伊藤雅敏 (Spread Wings) 22点
女子:萩原紀佳 (チーム附属) 18点

【MVP】
男子:辻村真貴 (Spread Wings)
女子:萩原紀佳 (チーム附属)

(文・上原伸一)
【ゴールボール】
 視覚に障がいがある人のために考案されたスポーツの一つ。1チーム3人で構成され、バレーボールと同じ大きさのコートで、交互に敵陣のゴール(幅9m×高さ1.3m)に目がけてボールを転がし、得点を競う。守備側の選手は、ゴール前に横たわり、自らの体を盾にして守る。1試合は12分ハーフの合計24分間。
 障がいの程度による競技力の差が出ないように、コート上の全選手にはアイシェード(目隠し)を付けることが義務付けられている。視覚からの情報がすべて遮断された状態で、プレーしている。コート内に貼られたラインテープの下には、糸が通してあり、その凹凸を頼りにして、選手は自分の位置を確認することができる。
また、ボールの中には鈴が入っており、その音で相手が投球したボールの方向やスピード、球種などを読み取る。ボールの大きさはバスケットボールと同じだが、重さはその約2倍の1.25kgもある。骨折や突き指の危険性もあり、守備側の選手は指に力を入れたり、鼻を両腕で覆うようにして手を伸ばす。また、ボールが後ろへ弾かれてゴールに入らないように、体を九の字に曲げたり、腕や脚はボールを挟むようにして伸ばすなど、さまざまな工夫が凝らされている。
萩原紀佳と伊藤雅敏の両日本代表が高い得点能力を発揮
女子は「チーム附属」が5度目の、男子は「Spread Wings」が新体制で初優勝
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女子は「チーム附属」が5度目の、男子は「Spread Wings」が新体制で初優勝
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萩原紀佳と伊藤雅敏の両日本代表が高い得点能力を発揮
女子は「チーム附属」が5度目の、男子は「Spread Wings」が新体制で初優勝
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