5月21日、第38回全日本視覚障害者柔道大会が講道館(東京都文京区)で開催された。
男女合わせて10階級に分かれて行われ、総勢30名が参加した。
声を出しての応援も可能となった今大会には、多くの観客が駆けつけ、選手達には温かい声援が送られた。
男子90kg級で圧倒的強さを見せたのは、北薗新光。
持ち前の力強さで、4試合全てを一本勝ちで収めた。「今日は普段以上の力が出せた」と語った北薗だが、序盤で勝負を決め、会場を大きく沸かせた。
90kg級は自分より重量の重い選手と戦うため、普段から100kg級以上の選手と練習をし、力をつけているという。
試合後「普段のトレーニングが試合に表れた」と振り返り、安堵の表情を浮かべた。
女子48kg級優勝をかけた藤原由衣(左)と石井亜弧(右)の一戦
女子48kg級で優勝を果たしたのは、石井亜弧。
2022年12月に行われた「東京国際オープントーナメント大会2022」直後から約8kgの減量を行い、女子57kg級から階級を落として今大会に臨んだ。
今回が初めての減量で、不安要素もあったが、「いいコンディションで試合に臨めた」と話し、「サポートしてくださる皆さんのおかげ」と感謝の言葉を口にした。
48kg級で出せる強みについて、"スピード"と"技を積極的にかけにいけること"の2つを挙げた石井。「技をもうちょっとかけて一本を取れたらいい」と今大会を振り返り、今後は「自分の持っている払い腰と背負いの技を使ってちゃんと持っていけるようにしていきたい」とパリパラリンピックに向けて意気込んだ。
【表彰者一覧】
・男子60kg級
1位:廣瀬誠 (愛知県立名古屋盲学校)
2位:平井孝明 (熊本県立盲学校)
3位:櫻井徹也
3位:兼田友博 (青森県立青森第一養護学校)
・男子73kg級
1位:瀬戸勇次郎 (九星飲料工業株式会社)
2位:藤本聰 (徳島県立徳島視覚支援学校)
3位:加藤裕司 (伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社)
・男子90kg級
1位:北薗新光 (アルケア株式会社)
2位:佐々木嘉幸 (ディーエイチエルジャパン株式会社)
3位:松本友和 (高場 クリニック)
・男子90kg超級
1位:廣瀬悠 (SMBC日興証券株式会社)
2位:正木健人 (三菱オートリース株式会社)
3位:内山輝将 (鹿島道路株式会社)
・男子無段
1位:高橋のぶよき (山北道場)
・女子48kg級
1位:石井亜弧 (三井住友海上あいおい生命株式会社)
2位:藤原由衣 (モルガン・スタンレー・グループ株式会社)
3位:半谷静香 (トヨタループス株式会社)
・女子57kg級
1位:工藤博子 (シミックウエル株式会社)
・女子70kg級
1位:小川和紗 (伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社)
・女子70kg超級
1位:西村淳未 (ボストンコンサルティンググループ)
・女子無段
1位:栗原梢 (タイムズコミュニケーション株式会社)
【視覚障がい者柔道】
視覚に障がいのある選手が行う柔道。障がいの程度によるクラス分けはなく、男女それぞれ体重別で行われる(2022年IBSAのクラス分けルールの変更により、国際大会ではJ1(全盲)とJ2(弱視)の2つにクラス分れ、それぞれ男女別の体重階級で試合が行われることになった)。試合場や柔道着も一般の柔道と同じ。試合時間は4分間。終了1分前には残りの試合時間を知らせるための信号音が鳴る。
ルールにもほとんど違いはない。ただ、試合開始の際、「礼」の後に、主審の指示に従い、対戦同士でお互いに襟と袖をつかみ、組み合った状態がつくられてから試合開始となる。試合中に2人が離れてしまった場合は、再び主審によって組み合った状態がつくられ、再開となる。そのため、常に組み合わなければならず、休む間もなく激しい攻防戦が繰り広げられる。一本で決まる勝負が多く、見応えのある試合が展開される。
選手は相手の息づかいや道着を掴む手の感触などから、次にどんな技をしかけてくるかを予測し、お互いに駆け引きを行っている。