MONEY DOCTORパラスポーツスペシャル 第30回日本ゴールボール選手権大会

男子は「ゴールデンスターズ」が初出場初優勝

11月4日〜5日に、「MONEY DOCTORパラスポーツスペシャル 第30回日本ゴールボール選手権大会」が新宿スポーツセンター(東京都新宿区)で開催された。
第30回目の節目となった日本ゴールボール選手権大会。男子は初出場のゴールデンスターズがチーム名の由来通り、金色に輝いて、初の頂点に。女子はチーム附属が、オーバータイムにもつれ込んだ決勝を制し、大会2連覇を遂げた。

前年の予選敗退も糧にチームが成長

「活動開始2年目で、23歳の僕が最年長の若いチームですが、これからの（ゴールボールを担う）世代が一丸になって優勝できた。嬉しいです」

初優勝を果たした直後のインタビュー、ゴールデンスターズの主将で、日本代表でもある金子和也は喜びを語った。

Be☆Starsとの決勝は、開始32秒に金子のゴールで先取点を挙げると、前半はその後に4点、後半は6点と次々に得点を追加。試合の主導権を握り続け、11対4 で完勝した。

この決勝では、金子が5得点、鳥居陽生が6得点と、8月に来年のパリ・パラリンピックの出場権を獲得した日本代表の2人が活躍した。だが、金子は「チーム力でつかんだ優勝」と強調する。昨年は予選で敗退。日本選手権初出場はかなわなかった。ゴールデンスターズはその悔しも糧に、一歩一歩、着実に成長してきた。

「チームとしての練習は月に1回ですが、それぞれが高い意識を持って個人練習に取り組んでいます。その成果で、ボールの威力や横の動き、さらには揺さぶりといったスキルが磨かれました」

決勝で激突した佐野優人擁するBe☆Starsの対策もしっかり行っていた。金子は「強いとわかっていたので、予選リーグの試合を見ながら、戦術を練りました」と明かす。ただし、戦術を練るだけでは優勝には届かない。ゴールデンスターズには戦術を実行できるだけの力があった。

「個々の選手がしっかりと、（戦術面での）役割も果たしてくれた。そのことで（決勝のなかでの）互いの信頼感が高まったと思います」

試合後の金子への取材では、パリ・パラリンピックに関する質問も多く飛んだ。日本代表を引っ張る自覚が十分な金子は、眼下のライバルである中国に対しても「日本は技の種類も豊富。持っている強みが出せれば、勝てない相手ではない」と闘志をみなぎらせていた。6月から7月にかけてのブラジル遠征では、世界ランキング1位の強豪から、ボールを投げ方やディフェンスを学んだという。

今大会のMVPに選出された金子は、ゴールボール全体の発展を願う思いも強い。「世界の舞台での経験を自チームに還元し、国内大会の底上げにつなげたい」と考えている。

女子はエース不在もチーム附属が連覇

チーム附属となでしこが激突した女子の決勝は、手に汗握る大接戦になった。試合はチーム附属が前半9分04秒に安室早姫のゴールで先制したが、後半2分18秒になでしこが天摩由貴のスローで同点に追いつく。そのまま両者ともに得点がなく、3分間のオーバータイムに突入。延長戦でも息詰まる攻防が展開されたが、2分03秒に安室がVゴールを決め、チーム附属が大会2連覇を果たした。

決勝での2得点の活躍で、安室は女子のMVPに。「30回目という記念すべき大会でMVPになれた。全ての（大会関係者の）みなさんに感謝したい」と話した。

チーム附属は前大会MVPのエース・萩原紀佳を欠くなかでつかんだ優勝だった。萩原はパリ・パラリンピックの出場権がかかるアジア/パシフィックチャンピオンシップ（11月10日～19日、中国）の調整のため、欠場していた。


今大会、萩原の「代役」としてライトに入ったのが、木村由だった。木村は日本代表チームでも萩原のサブを務めている。持ち味はパワーのある伸びるボールだ。

木村は「初めてフルで出たので、大会中はずっと緊張してました。決勝では先制点を取られて苦しかったですが、チームとしてよく粘ったと思います」と振り返ると、こう続けた。

「エース不在でも（チーム附属は）選手層が厚いので、協力し合って戦術通りに試合ができれば…というのはありました。決勝も守り続けていれば、勝機はあると信じ、1球ごとに気持ちを切り替えてました」

練習では男子選手に投げてもらってディフェンス力を鍛えているというチーム附属。強いボールにも負けないで立ち向かう日々の積み重ねが、大一番での心技の粘りを生んだ。

得点王は男子は佐野が、女子は天摩が受賞

男子で得点王に輝いたのはトータル30得点を挙げたBe☆Starsの佐野。チーム附属Aとの準決勝では、実に10点中9得点をマークするなど、大車輪の働きを見せた。佐野は日本代表の要の選手でもある。パリ・パラリンピックに向けての抱負を聞かれると「日本の美徳でもある真面目さだけでは勝てない。中国やブラジルのようにテクニックの面も強化して、パリではメダルを獲りたい」と意気込みを見せた。

女子の得点王は、なでしこの天摩。今大会20得点も、決勝では自身の先制ゴールが栄冠に結びつかなかった「得点王は久し振りですが、優勝できなかったので…チームとして、24分間守り抜けるディフェンス力をつけたい」。口をついたのは悔しさであり、今後の課題だった。

今大会は、予選大会に男子（17チーム）、女子（9チーム）ともに史上最多となるチームが出場。本大会でも熱戦に次ぐ熱戦で、第30回目の節目にふさわしい盛り上がりを大会の長い歴史に刻んだ。

（文・上原伸一/撮影・村上智彦）

【順位】
・男子
1位 ゴールデンスターズ
2位 Be☆Stars
3位 スーパーモンキーズ

・女子
1位 チーム附属
2位 なでしこ
3位 むさしずく

【得点王】
男子：佐野 優人 (Be☆Stars) 30点
女子：天摩 由貴 (なでしこ) 20点

【MVP】
男子：金子 和也 (ゴールデンスターズ)
女子：安室 早姫 (チーム附属)

【会長賞】
中村 義弘 (スーパーモンキーズ)