Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア
2024年1月17日

2024アジアオセアニアチャンピオンシップス

因縁のライバル・韓国を撃破!“負けられない戦い"へ準備は万端!

試合を作ったスターティング5の一人、宮本涼平 | 因縁のライバル・韓国を撃破!“負けられない戦い”へ準備は万端!|2024アジアオセアニアチャンピオンシップス | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

試合を作ったスターティング5の一人、宮本涼平


タイ・バンコクで開催されている車いすバスケットボールのパリパラリンピック出場権争奪戦、アジアオセアニアチャンピオンシップス(AOC)。大会6日目の17日には男子の予選プール最終戦が行われ、日本代表は2勝2敗で並んでいた韓国と対戦した。1Qからダブルスコアでリードした日本は、その後も主導権を握り続け、56-39で勝利を収めた。指揮官から下された戦略をほぼ完璧に遂行した日本のディフェンスに、“因縁のライバル"が折れた形での快勝だった。

ビッグマン3枚を完璧に封じたスターティング5

最大の勝因は、日本が最高のディフェンスでスタートした1Qにあったと言っていいだろう。4分もの間、無得点が続き、一見、両チームはお互いに苦戦しているように見えていたが、実は日本にとっては想定内であり、一方でしっかりと最大のミッションが実行に移されていた。

「序盤は重苦しい時間帯が続きましたが、こういう展開になるだろうことは予想できていました。だから選手たちには『たとえ得点が取れなくても、我慢強く辛抱強くディフェンスでいこう』と伝えていました」と京谷和幸ヘッドコーチ(HC)。その指揮官からの指令を、藤本怜央(4.5)、秋田啓(3.5)、鳥海連志(2.5)、赤石竜我(2.5)、宮本涼平(1.0)のラインナップが遂行した。

最大のミッションは、3人のビッグマンからのインサイドでの得点を封じることにあった。そこで“レギュラー"と呼ばれる3ポイントラインからボールプレッシャーをかけていく高いラインのハーフコートディフェンスをしいた。連携を必要とするローテーションやトリプルスイッチ、さらにはミスマッチの状態からのハイポインターとローポインターのスイッチを完璧にやってのけた日本の強固なディフェンスに、韓国のビッグマンたちは徐々に疲弊していった。

特に最大のミスマッチとして狙われた5人のうち唯一のローポインターである宮本が、ビッグマンのパワーにも臆することなくスキルで対応し、さらに藤本や秋田との連携を図ったディフェンスを実行したことで、日本に隙が生まれなかったことがポイントとなっていた。そして藤本と秋田が2人へのミッションとされたベースラインからの侵入を決して許さなかったこと、さらには負傷した初戦以来の先発となった赤石が持ち味である守備力を遺憾なく発揮したことも大きかった。

ミドルシュートを狙う秋田啓 | 因縁のライバル・韓国を撃破!“負けられない戦い”へ準備は万端!|2024アジアオセアニアチャンピオンシップス | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

ミドルシュートを狙う秋田啓


結局、一度もペイントエリアでシュートチャンスを作り出せないまま、ビッグマン3人のうち2人が1Q後半に早くも交代するなど、いずれも無得点に終わった。また、ターンオーバーは日本が0に対して、韓国は1Qの10分間だけですでに5にのぼっていた。いずれも日本のディフェンスの勝利と言えた。

一方、オフェンスでは先取点こそ相手に許したものの、その直後の攻撃で秋田がハイポインターからのプレッシャーをものともせずにミドルシュートを決めたことで、流れを渡すことなくすぐに試合を振り出しに戻したことが大きかった。そして京谷HCの言葉通り、ディフェンスで我慢強く戦い続けた結果、終盤には日本のシュートが決まるようになり、結果的には12-6と1Qからダブルスコアとした。

安定した得点力でチームを支えた香西宏昭 | 因縁のライバル・韓国を撃破!“負けられない戦い”へ準備は万端!|2024アジアオセアニアチャンピオンシップス | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

安定した得点力でチームを支えた香西宏昭

イラン戦と同じ轍を踏まなかった3Q、“防波堤"となった香西の得点力

続く2Qは強固なディフェンスに加えて、オフェンス力でも韓国を圧倒。藤本がこの試合チーム初の3ポイントシュートを決めて先陣を切ると、途中で投入された香西宏昭(3.5)と髙柗義伸(4.0)もそれぞれ6得点を挙げてチームを力強く後押しした。特にオーストラリアやイランといったライバルとの対戦では、なかなか思うように得点を伸ばせずにいた髙柗が、5分足らずの間に放った3本すべてのシュートを決め切ったのは、決勝トーナメントに向けての明るい材料の一つでもあったことだろう。

得点を取るべき選手が取り、うまく歯車がかみ合い出していた日本とは異なり、韓国はやはり日本のディフェンスに手こずり、得点を挙げるのはハイポインター陣ではなく、クラス1.0のローポインターばかりというイレギュラーな状態が続いていた。

ようやくビッグマンに得点が入り始め、韓国が唯一日本を上回るスコアとしたのが3Qだった。しかし、決して流れを引き寄せることができたわけではなかった。その要因が、香西という存在にあったことは間違いない。2日前のイラン戦で最大の敗因とされたハーフタイム後の3Qの入りから3ポイントを含めて3連続得点を挙げた香西は、その後も次々とシュートを炸裂。結局、3Qの全11得点を一人で挙げた。その一方で香西を除いて放った10本のシュートは全てリングに嫌われていたことも事実だった。韓国に流れがいってもおかしくはなかったが、香西がその“防波堤"の役割を担うことで日本の勢いが衰えることはなかった。

そして4Qの序盤、韓国はついに折れたのだろう。最大の得点源であるキム・ドンヒョンとチョ・スンヒョン(いずれも4.0)を同時にベンチに下げたのだ。結局、7分もの間、韓国は得点することができず、最後まで日本のディフェンスに苦しめられたまま終わった。

この試合、韓国のトップスコアラーはクラス1.0のローポインターで、全体の4割を占めた。日本の“ビッグマン封じ"が成功していた何よりの証だ。そしてターンオーバーは日本がわずか3に対して、韓国は16にものぼった。この数字からもいかに日本が主導権を握っていたかがわかる。

日本代表の得点に沸くベンチと観客席 | 因縁のライバル・韓国を撃破!“負けられない戦い”へ準備は万端!|2024アジアオセアニアチャンピオンシップス | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

日本代表の得点に沸くベンチと観客席

これで予選プールが終了し、日本は3勝2敗で勝ち越し、3位通過となった。18日からはいよいよ決勝トーナメントが始まる。ここからは一度も負けることが許されない厳しい戦いが続く。果たして日本はどんなフィナーレを迎えるのか。

「やるべきことはすべてやってきたし、どこと当たっても勝つ以外にない。あとはいつも通り自分たちのバスケットをやるだけです」と京谷HC。「どんな困難も全員で立ち向かう」という思いが込められたチームスローガン“魄繋(はっけい)"の下、たった一枚のパリへの切符をつかみ取る。

(文・斎藤寿子/写真・湯谷夏子、村上智彦)

【車いすバスケットボール】
 一般のバスケットボールとほぼ同じルールで行われる。ただし「ダブルドリブル」はなく、2プッシュ(車いすを漕ぐこと)につき1回ドリブルをすればOK。
選手には障がいの程度に応じて持ち点があり、障がいが重い方から1.0~4.5までの8クラスに分けられている。コート上の5人の持ち点の合計は14点以内に編成しなければならない。主に1.0、1.5、2.0の選手を「ローポインター」、2.5、3.0、3.5を「ミドルポインター」、4.0、4.5を「ハイポインター」と呼ぶ。
 国内では健常者の参加が可能で、持ち点は4.5。また天皇杯など男子の大会に女子選手が参加することも可能で、女子選手1人につきコート上の5人の持ち点の合計が1.5点加算される。
障がいが軽いハイポインターでも車いすのシートから臀部を離すことは許されず、座ったままの状態で一般のバスケと同じ高さ・距離でシュートを決めるのは至難の業だ。また、車いすを漕ぎながら、ドリブルをすることも容易ではなく、選手たちは日々のトレーニングによって高度な技術を習得している。
ジャンプはないが、ハイポインターが車いすの片輪を上げて高さを出す「ティルティング」という技がある。ゴール下の激しい攻防戦の中、ティルティングでシュートをねじ込むシーンは車いすバスケならではの見どころの一つだ。
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