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2024年8月29日

パリ2024パラリンピック競技大会 8/29【パラ卓球】

男子ダブルス八木・舟山ペア初戦敗退も、つかんだシングルスへの手応え

ドイツ選手のサーブを待ち構える舟山真弘・八木克勝ペア | 男子ダブルス八木・舟山ペア初戦敗退も、つかんだシングルスへの手応え|パリ2024パラリンピック競技大会 8/29【パラ卓球】 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

ドイツ選手のサーブを待ち構える舟山真弘・八木克勝ペア

8月28日に開幕したパリ2024パラリンピックは、29日に競技がスタート。パリ南アリーナではパラ卓球のダブルスが行われ、立位の男子ダブルスには東京2020パラリンピックに続いて2回目の出場となった八木克勝と、現役大学生で初出場の舟山真弘が登場した。ヨーロッパ覇者の強豪ペアに対し、第1ゲームを先取したものの、第2ゲーム以降3ゲーム連続で奪われ、ゲームカウント1-3で敗れた。それでも八木と舟山はそろってシングルスに向けて手応えを感じていた。
巧みな返球技術で相手を翻弄する八木 | 男子ダブルス八木・舟山ペア初戦敗退も、つかんだシングルスへの手応え|パリ2024パラリンピック競技大会 8/29【パラ卓球】 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

巧みな返球技術で相手を翻弄する八木

八木、実感した3年前からの成長と新武器の効力

この試合、最大のポイントとして勝負の分かれ目となったのは、ゲームカウント1-1と並んだ後の第3ゲームにあった。

パラ卓球・立位は障がいの程度により、6〜10にクラスが分かれる(数字が大きいほど障がいが軽い)。男子ダブルス(MD18)は2人のクラスの合計が18以下とならなければならない。そのため、最も障がいが軽い組み合わせとなるようにクラス10と8の選手同士でペアを組むことがほとんどだ。

そんななか、八木、舟山ペアはクラス7と10の組み合わせで、クラス7の八木はどうしてもパワーの部分では負けてしまう。そこで八木は、相手のリズムを崩し、打ち気にはやる相手のミスを誘うようにして、緩く、ループを描くような球を多用した。それが奏功したのが、第1ゲームだった。出だしでリードを許し、引き離されかけたなかで粘って6-6と同点に追いつくと、手に汗握る接戦を14-12で競り勝った。

ところが、第2ゲームは6-3と前半でリードを奪ったものの後半になるとミスが続き、7-11と逆転を許した。さらに第3ゲームは4-7から粘って追いついたものの、最後は八木のフォアハンドが決まらず、9-11と押し切られた。その第3ゲームについて、八木はこう語る。

「僕がもう少しゆっくりしたボールを送っていれば、また10オールになっていたかもしれません。第1ゲームを取っていただけに、なんとか勝ちたかったです」

第4ゲームは完全に主導権を握られ、0-11と完敗。ゲームカウント1-3で敗れ、8強入りとはならなかった。ただ、八木に後悔はない。3年前と同じ轍は踏まなかった自分がいたからだ。

「ちゃんと振ってミスをしたので、僕の中では満足しています。東京大会では打てずに終わったけれど、今回は打って終わることができた。その意味ではいい滑り出しかなと思っています」

さらにシングルスに向けて、得られたものがあった。東京パラリンピック後に変えた打球に回転がかかりにくいアンチラバーのラケットだ。昨年金メダルに輝き、いち早くパリへの出場権を手にしたアジアパラ競技大会では世界でもほとんど使用されていないアンチラバーの効力を実感。海外勢が対策を講じることができずにいる様子に自信をつかんだ。そして今回、障がいが軽いクラスの選手にもその効力は十分にあったと見ている。

「今日のダブルスでもアンチラバーを嫌がっていたからこそ、フォアにばかり来ていいたのだと思います。クラスが高い選手でも嫌だということは、僕と同じクラスの選手はもっと嫌なはずです」

ただ楽観視するつもりはない。

「相手がアンチラバーに慣れていると想定をして戦います」

心身ともに万全の状態でパリに乗り込んだ八木。シングルスでは世界ランキング2位の実力を存分に発揮して、表彰台を狙う。
緊張の初舞台にもかかわらず、舟山は堂々としたプレーを見せた | 男子ダブルス八木・舟山ペア初戦敗退も、つかんだシングルスへの手応え|パリ2024パラリンピック競技大会 8/29【パラ卓球】 | Glitters 障害者スポーツ専門ニュースメディア

緊張の初舞台にもかかわらず、舟山は堂々としたプレーを見せた

舟山、観客を沸かせるプレーでも目標のメダル獲得に挑む

一方の舟山は「技術的にもメンタル的にも、弱さを痛感した試合。最後の最後に取り切る力をもっと磨かなければいけないと感じました」としながらも「相手はヨーロッパチャンピオンで本当に強いペアであることはわかっていました。それもでも第1ゲームを取れたということは全体的にいい試合ができたかなと思っています」と手応えを口にした。

舟山が課題としているのが、台上技術とバックハンド。まだ苦手であることは否めないものの、それでもこの1年間、パリへの選考レースに挑むなか、試合ごとに丁寧にフィードバックをして一つ一つ課題をクリアしてきたという自負がある。この日の試合でそれがより明確となり、自信をつかんだ。

さらに20歳のモチベーションを高めているのが、観客の大歓声が響き渡り、熱気に包まれた会場の雰囲気だ。

「初日からたくさんのお客さんに入ってもらって、僕らのプレーを見て盛り上がってくれたのは本当に嬉しいです。たくさんのお客さんの前で卓球ができることは幸せなこと、嬉しいことだと感じました」

昨年のアジアパラ競技大会で初めて大観衆の前でプレーし、「見てもらう楽しさを感じ、緊張よりも楽しさの方が上回っていた」と語っていた舟山。この日、その1年前のことが重なったという。そして当時の経験が生かされ、浮つくこともなく、スムーズに試合に入ることができたと感じている。

アジアパラで「勝敗だけでなく、お客さんを驚かせたり喜ばせられるようなプレーをしたい」という思いが芽生えた舟山は、シングルスに向けてこう抱負を述べた。

「またたくさんのお客さんが入ってくれると思うので、皆さんに楽しんでいただけるようなプレーがしたいと思います。その上でメダル獲得という目標を必ず達成したいと思います」

シングルスで八木と舟山がどんなプレーで観客を沸かせるのか、楽しみだ。

(文・斎藤寿子/撮影・中島功仁郎)
 
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