パリ2024パラリンピック大会2日目の8月29日、車いすラグビーの予選ラウンド4試合がシャン・ド・マルス・アリーナで行われ、プールAの日本(世界ランキング3位)はドイツ(同9位)との一戦に臨んだ。序盤こそ緊張や硬さが見られたものの、徐々にリズムを取り戻すと相手を大きく引き離し、55-44で勝利を収め、初戦を白星で飾った。
リオ、東京のパラリンピック2大会連続で銅メダルを獲得した日本は、パリで悲願の金メダル獲得を狙う。会場には日本からも多くのファンが応援にかけつけ、まるでホームのような雰囲気のなか、ティップオフを迎えた。
ハイポインター2人とローポインター2人で組む「ハイローライン」でスタートした日本。そのスターティングラインナップに、チームで唯一、パラリンピック初出場となった草場龍治も名を連ねた。「緊張はしたが、気持ちの準備はできていたので、コートに入って集中することができた」と草場。持ち前のハードワークとスピードを惜しみなく発揮し、華々しくパラリンピックデビューを飾った。
第1ピリオド、日本は立ち上がりからドイツに強いプレッシャーをかける。ただ、初戦の緊張からか、あるいはパラリンピックという特別な存在がそうさせているのか、動きに硬さが見られる。
停滞する空気を断ち切ろうとベンチが動く。ここで、いくつもカードがあるのが、今の日本の強みだ。
試合開始から4分が過ぎようとした時、日本が最初のメンバーチェンジ。その直後に2つのターンオーバーを奪うなど一気に流れを引き寄せ、13-12で終えた。
第2ピリオド。ギアを上げた日本が5連続得点を奪う。倉橋香衣、長谷川勇基をはじめとするローポインターたちの奮闘が光る。コートの中でもベンチにいても、みんなで丁寧にコミュニケーションを取り、磨いてきたチームプレーでトライを重ね、28-19で試合を折り返した。
第3ピリオドでは、スペースを広く使うラグビーを展開し、池崎大輔の力強いラン、さらに橋本勝也の巧みなチェアワークで相手を振り切る。どんなにリードしていようとも、最後までスコアすることにこだわる日本は、ピリオド残り0.5秒でも選手交代を行うなど果敢に攻め続けた。
38-32で迎えた最終ピリオド。同じメンバーで戦い続けるドイツに疲れが見え始めると、連係プレーの強度を高める。日本が初出場した2004年のアテネから、パラリンピック6大会連続出場を果たしたベテラン、島川慎一が浮いたボールをカットしターンオーバー。
そうして、パラリンピックの大事な初戦で、日本は12人のメンバー全員がコートに立ち、55-44で勝利を収めた。
試合終了後、大きく手を振りながら全員でコートを一周し、心強い応援に感謝の思いを伝えた。
キャプテンの池 透暢は「大歓声の中でプレーができる喜びを感じながらプレーをスタートした」と笑顔を見せた。
そして、結果を見れば圧勝とはいえ、ミスもあった初戦については、「出来としては70点。一つひとつ、やるべきことを大切にしていこう、独りよがりのプレーになるのではなく4人が連係したプレーを続けていこうというのが今回のコンセプト。自分たちのベストのラグビーをしながら、最後の最後までやりきって頂点を取りに行く、その思いはブレない。今日はほろ苦い勝利となったが、ここからチームが完成していくという流れで十分だと考えている」と語った。
日本は8月30日、予選ラウンド2戦目となるアメリカとの一戦に臨む。
東京パラリンピックから3年をかけて積み上げてきた、日本のラグビーが人々を熱くする。
(文・張 理恵/撮影・中島 功仁郎)