11月29日〜12月1日の3日間、2nd World Games of Deaf Athletics Teams 2024(以下、DAT)兼 第21回日本デフ陸上競技選手権大会(以下、デフ日本選手権)兼 第4回日本デフU18陸上競技選手権大会が駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場(東京都世田谷区)で開催された。ハンマー投げのみ大井ふ頭中央海浜公園陸上競技場(東京都品川区)での実施となった。7月に台湾で開催された第5回世界デフ陸上競技選手権大会に出場した日本代表選手をはじめ、11カ国と地域から多くの有力選手が集い大いに盛り上がりを見せた。
デフ日本選手権女子棒高跳で末吉凪(明治国際医療大学)が3m60のデフ世界新記録(*)を樹立した。末吉は3m00、3m20を1回でクリアし優勝を決め、自身の日本記録を1センチ超える3m41も余裕を持って成功。続いて、世界記録を5センチ上回る3m50にバーの高さを設定。1回目の跳躍は失敗に終わるが、2回目の跳躍で成功した。末吉は「健常者の大会は10センチ単位で高さが上がるのでそれに合わせた」とさらに10センチ上げた3m60もクリア。3m70は3回連続で失敗に終わったが、従来の記録を15センチ上回る世界新記録を樹立した。「まずは全日本インカレ標準記録の3m75に突破が目標。そして、来年のテフリンピックでは4mを跳んで世界新記録の更新と優勝を目指します」と抱負を語った。
*世界記録はドーピング検査、聴力検査の上で正式認定される。
2nd World Games of Deaf Athletics Teams 2024 男子100mを制した佐々木琢磨
日本短距離のエース佐々木琢磨(仙台大AC)は今大会2種目で優勝を飾った。11月30日に行われたDAT男子100mでは10秒73で接戦を制した。佐々木は「寒い中、向かい風-1.3mの中でのレースとなったが、シーズンベストタイで走れたのは悪いタイムではないと思う」と語った。そして、11月30日は佐々木の誕生日だったことから、「競技人生で誕生日と試合が被ることは滅多にないことでもあり、そこで優勝できたのはとても嬉しい」と笑顔を見せた。
12月1日に行われたデフ日本選手権男子200mでは前日の疲労を感じさせない圧巻の走りを見せ、22秒31をマークして2種目を制し、観客からは大きな拍手が送られた。「今年、モチベーションが上がってきた。来年に向けて1年間あるので、タイムを今以上に更新したい」と次のステージを見据えていた。
第21回日本デフ陸上競技選手権大会男子ハンマー投は遠山莉生が56m64で初優勝
11月29日に大井ふ頭中央海浜公園陸上競技場で行われたDAT男子ハンマー投で、7月に台湾で行われた第5回世界デフ陸上競技選手権大会で金メダルを獲得した石田孝正(愛知陸協)が55m32で優勝した。石田は「来年のデフリンピックでは世界記録と金メダルを狙いたい」と意気込みを語った。
デフ日本選手権ハンマー投では遠山莉生(筑波大学)が56m64で初優勝を飾った。遠山は大学入学後、自己ベストを毎年更新し続けており、7月の世界デフ陸上競技選手権大会では初めて日本代表として出場し、銅メダルを獲得。今大会では石田を上回る記録をだした。「意識しないようにしていたが、石田さんに初めて勝てて嬉しい」と喜びを口にした。「来年のデフリンピックでは世界記録が目標。毎年自己ベストを更新しているので、いけると思う」と自信をのぞかせた。
第5回世界デフ陸上競技選手権大会では石田、森本真敏、遠山の3人で表彰台を独占した。来年のデフリンピックでも日本勢の表彰台独占が大いに期待できる。
( 撮影・文 / 玉城萌華 )