3月29日、「2025パラカヌー日本代表選手選考会 兼 第35回府中湖カヌーレガッタ」が香川県坂出市の府中湖カヌー競技場で開催された。障害クラス別にカヤック(KL)およびバー(VL)の2種目が実施され、男女あわせて21名の選手が出場。
本大会は、2025年度の国際大会に出場する日本代表選手を選考する重要な大会となっている。
男子KL1では、高木裕太(インフィニオンテクノロジーズジャパン株式会社)が1分11秒921のタイムで昨年に引き続き優勝。
今年初の大会出場となった高木は、パリパラリンピック後に変更したカヌーのシートの影響もあり、まだ調整途中でのレースとなった。それでも「安定した漕ぎができた」と語り、成長の手応えを感じている様子だった。

昨年のパリ2024パラリンピックで6位入賞を果たした瀬立モニカ
女子KL1とVL2の両種目に出場した瀬立モニカ(パラマウントベッド/江東区カヌー協会)は、それぞれ1分01秒237、1分22秒888を記録し、見事2冠を達成。
しかしレース後のインタビューでは、「トレーニングを積みすぎてコンディショニングがうまくできなかった」と、コンディション調整の難しさを口にした。
また、横風と向かい風が影響する春特有の風向きに苦戦したことも振り返り、「どんな環境でも対応できるようにしたい」と今後の課題を前向きに捉えた。
5月のワールドカップに向けては、「今大会で得た課題を克服し、記録を残していきたい。ロサンゼルス・パラリンピックに向けて、一戦一戦集中して進んでいきたい」と熱意を込めて語った。
選手たちはそれぞれに課題と向き合いながら、さらなる高みを目指して進み続けている。これからどんな姿を見せてくれるのか、引き続きその活躍に注目していきたい。
(文・玉城萌華/撮影・鈴木奈緒、木林暉、玉城萌華)
【優勝者一覧】
男子VL1
高木裕太(インフィニオンテクノロジーズジャパン株式会社)1分15秒931
男子VL2
加藤隆典(岐阜県カヌー協会パラカヌー部)1分09秒938
男子VL3
今井航一(三井海洋開発株式会社)56秒822
女子VL2
瀬立モニカ(パラマウントベッド/江東区カヌー協会)1分22秒888
女子VL3
宮嶋志帆(神奈川県カヌー協会)1分27秒321
男子KL1
高木裕太(インフィニオンテクノロジーズジャパン株式会社)1分11秒921
男子KL2
辰己博実(テス・エンジニアリング株式会社)54秒566
男子KL3
林侑平(香川県パラカヌー協会)54秒580
女子KL1
瀬立モニカ(パラマウントベッド/江東区カヌー協会)1分01秒237
女子KL2
宮嶋志帆(神奈川県カヌー協会)1分07秒932
女子KL3
加治良美(NTP名古屋トヨペット株式会社)58秒698
【パラカヌー 】
下肢に障がいのある選手たちが行うカヌーは、200mのタイムを競う「スプリント」。男女別に、障がいの程度に応じてクラスが分かれてレースが行われる。
使用する艇が異なり「カヤック」と「ヴァー」の2種目がある。「カヤック」はパドルの両端に「ブレード」と呼ばれる水かきが付いた「ダブルブレードパドル」を使用。一方、「ヴァー」には片側に「アウトリガー」と呼ばれる浮力体が付いており、パドルもブレードが片側のみの「シングルブレードパドル」を使用する。
レースは、流れのない静水の水上に設定された直線コースで行われ、ひとつのコースの幅は9m。そのうち中央の4m幅が漕行エリアとなっている。漕行エリアから左右どちらかにはみ出した場合は、コースアウトで失格となる。
障がいの軽いクラスでは、クロスバイクと変わらない時速で200mをわずか40秒でゴールする選手もおり、「水上のF1」と言われている。一方、障がいの重いクラスでは体幹を使えない選手もいる。足の踏ん張りも、体幹の力も使わずに、主に両腕の力だけで漕ぐのは至難の業。さらに自然の中で行われるため、天候や場所によって条件はさまざま。わずかな風や波でも、両腕だけでバランスを保ちながら、真っすぐに漕ぐことは見た目以上に難しい。